対談・座談会

◆2025年の協会活動と監査役等をめぐる最近のトピックス(日本監査役協会正副会長座談会)

2025年3月13日、公益社団法人日本監査役協会の正副会長による座談会を開催いたしました。以下に一部を抜粋してご紹介いたします。速記録全文につきましては、『月刊監査役』2025年5月号(No.775)をご覧ください。

[出席者]<公益社団法人日本監査役協会>
会 長 塩谷 公朗(三井物産株式会社 常勤監査役)
副会長 玉置 秀司(オムロン株式会社 常勤監査役)
副会長 山田 龍彦(東海旅客鉄道株式会社 常勤監査役)
副会長 小幡 忍 (日本電気株式会社 取締役 監査委員)
[司 会] 専務理事 後藤 敏文


監査役会等の実効性評価の意義
後藤:従来から監査報告書作成のプロセスを通じて、監査役等の活動の一年の振り返りは実施されていますが、コーポレートガバナンス・コードにおける取締役会の実効性評価を受けて、自主的に監査役会等における実効性評価について取り組まれる事例も増える中(2024年11月12日公表「『監査役会等の実効性評価』の実施と開示の状況」日本監査役協会ケース・スタディ委員会)、各社の現状はいかがでしょうか。また、監査役等の活動に対する執行側の理解向上に向けて、どのように取り組まれているかにつき、併せてご紹介ください。
玉置:当社では2017年度から監査役会の実効性評価を実施しております。質問票に各監査役が回答して自己評価する形式でスタートしました。2019年度からは実効性評価を実施していることを有価証券報告書に開示し、2021年度からは実効性評価の結果も開示しています。また、2022年度からは、有価証券報告書に加えて事業報告においても評価の結果を開示しております。
現在の評価の方法ですが、大きく五つあります。一つ目は従来からの質問票形式による各監査役の自己評価であり、毎年設定している「監査役会の課題」に対して各監査役がどのように行動したかという点と、当社で定めている「オムロン監査役行動原則」に沿って各監査役がどのように行動したかという点を評価しております。二つ目は監査の結果の振り返りで、三つ目は、毎年ではなく3年に1回程度の頻度で実施する、他社比較のベンチマーキングです。四つ目は、取締役8名へのアンケート(無記名)で、取締役会で監査役会の活動報告をした後にアンケートに回答してもらい、回答結果は次回の取締役会にて報告いたします。五つ目は、現在試作中の取組ですが、監査役会の活動に関する「企業価値貢献度評価」を行っております。具体的には、「企業価値貢献度評価シート」というものを作成し、監査役会で議論し、提言したことが取締役会や執行部門にどれだけ役に立ったかを3年程度のスパンで追いかけていく取組です。
山田:当社では、3年前から全監査役を対象としたアンケート形式による実効性評価を実施しております。設問は13問で、協会の研修会(講師:倉橋雄作弁護士)で聴講した内容を参考にいたしました。三様監査の連携やグループガバナンスの実効性等、基本的な点は網羅しているかと思います。
課題としては、まだ取締役会、監査役会とも第三者評価を実施しておりません。今、玉置様からお聞きし、第三者評価よりも、まずは社外役員アンケートから実施しても良いのではないかと感じたところです。また、現状は単年の評価ですが、例えば3~5年前と比較して変化があったかなど、中期の視点も取り入れても良いのではないかと考えています。単年の評価の場合、逆に課題が見えづらく形骸化する可能性があり、中期で比較すれば変化が見え、実効性の向上につながるのではないかと思っております。
実効性評価は、ステークホルダー、そして投資家の信頼性確保のために実施していることもありますので、何について評価し、結果がどうであったかも開示することは大事で、当社はまだ有価証券報告書での開示に課題があり、充実化を図っていきたいと思っております。
小幡:当社も10年近く前に、当時の社外監査役の要望を受けて監査役会の実効性評価を実施し始めており、その後、一定の開示もしてきました。2年前に指名委員会等設置会社に移行した後は、監査委員会独自の実効性評価は実施せず、取締役会の実効性評価の中で、指名委員会、報酬委員会、監査委員会という3委員会への質問項目を含めて実施しており、監査役会設置会社であった時代とは実施の方法を大きく変更しています。
監査委員会は取締役会の一組織ということで、監査委員会の役割について、監査委員である取締役それぞれのバックグラウンドの多様性により、認識を統一するのが難しい面もあります。この点、監査役会設置会社の場合、監査役は取締役から独立した監査のプロであるとともに、監査役は独任制であるため、個々の判断に基づく行動を実効性評価というプロセスを通じて束ねていくというアプローチが効果的であるかと思いますが、監査委員会や監査等委員会のように組織監査を前提とする監査の場合、どのように実施するのが望ましいか、まだ検討途上であると考えています。
監査委員会の活動に対する執行側の理解については、監査役会設置会社からの移行後まだ2年であり、課題があると感じております。先ほども申し上げましたように、取締役会による監督と監査委員会による監査について、どこに線引きをするかは非常に難しく、悩ましい課題です。
塩谷:当社でも実効性評価はかなり以前から取り組んでおり、有価証券報告書では評価結果も含めて開示しております。評価の方法につきましては、監査役室のスタッフが各監査役へ個別にインタビューします。設問は大きく分けると7項目(監査役会の体制、会計監査人との会合の運営状況・審議状況、往査を含めた業務全般、監査役への支援状況、会計監査人の評価プロセス等)で構成され、全体では約50問です。監査役5名のインタビュー結果をスタッフが取りまとめ、それを基に監査役会で議論します。
執行部側の監査役に関する理解促進については、昨年の本座談会(『月刊監査役』No.761:2024年4月号)でも紹介いたしました。年度を終えての監査役会としての所感と次年度の課題について、「所感と課題」というレポートの形で取締役会に提示し、取締役会で監査役会側から説明をした後に社長が回答した上で、質疑応答を行っています
また、監査役会の「所感と課題」と社長の回答書については、取締役会終了後に社内のイントラネットに日本語・英語で掲示され、グループ会社を含めて毎年相当数の閲覧があります。各セグメントの会議体、各グループ会社の会議体でもよく紹介されていますので、どういう視点で監査役会が見ているか、それに対して執行部がどう応えようとしているかの審議の状況や考え方が一定程度、浸透しているのではないかと思っております。

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