インタビュー

2025年7月【経営者と監査役】
株式会社マーケットエンタープライズ
代表取締役社長 小林 泰士さん
常勤監査役   山﨑 眞樹さん

テーマ:
IPO前後における監査役への期待と役割、経営者と監査役のコミュニケーションに触れて

株式会社マーケットエンタープライズは、スタートアップとして高い成長意欲を持ちながら、創業当初からガバナンスを重視し、2015年に上場を果たされました。今回は、IPO前後における社内体制の構築や監査役への期待と役割について、代表取締役社長の小林泰士様と監査役の山﨑眞樹様にお話を伺いました。

  • ※本稿は2025年5月13日に実施したインタビューの内容をまとめたものです。
  • ※本稿では、監査役・監査委員・監査等委員を総称して「監査役等」と言います。
  • ※こちらでは、インタビューの一部をご紹介いたします。
  • ※※全文は月刊監査役777号(2025年7月号)に掲載しております。

はじめに(株式会社マーケットエンタープライズの御紹介、監査役選任の経緯)

―まず、御社の沿革や事業展開について簡単に御紹介いただけますか。
小林氏 当社は2006年の七夕、7月7日に設立しました。当社の創業を振り返ると、中古乾電池のリユースから立ち上がりました。使い捨てカメラにはフラッシュを焚く専用のアルカリ電池が組み込まれていますが、余り電力を消費しないため、利用後も残容量が十分に残っている乾電池が全て廃棄処分されてしまうといった状況でした。それを見て「これはもったいない、ビジネスになる」と思ったのがスタートで、廃棄される電池の通販、Eコマースからスタートしたことがベースになっています。その後、フリーマーケットの全国展開を通して、「これからはリユースとEコマースの時代が来るのではないか」と考え、より拡大の見込める市場に軸足を移しながら成長期を迎えました。
 当社の社名である「マーケットエンタープライズ」には、「市場を冒険的に創出していこう」という思いが込められており、企業理念に「WinWinの関係が築ける商売を展開し商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」と掲げています。当社は、いわゆる会社名イコールサービス名ではなく、時代に即した事業を展開し、多角的に発展していく企業グループを興していきたいという思いでスタートした会社です。創業期を経てネット型リユース事業が成長期を迎え始めたことで、当時IPOに向かって進んでいくタイミングにつながったのだと思います。
 そこからは、社内のITシステムを内製化しつつ整備し、全国に拠点を増やしてサービスの品質化を進め、併せて会社内部の管理体制も整えていくという体制強化をIPO準備とともに進めていくフェーズに入りました。そして2015年6月には東証マザーズ市場に上場し、事業の多角化を進めグループ経営期に入り、現在20期を迎えております。
 「持続可能な社会を実現する最適化商社」という長期ビジョンを掲げて事業面、管理体制面共に様々な方面で強化を進めておりますが、時代が追いついてきたと言うと恐れ多いものの、リユースそのものが脚光を浴びるようになり、マーケットも非常に大きくなってきましたので、この20期を経て更に飛躍していきたいと考えております。

―その中で、上場に向けて山﨑様が2013年に監査役に就任されました。当時の選任経緯について御紹介いただけますか。
山﨑氏 きっかけは公益社団法人日本監査役協会(以下「協会」)の「役員人材バンク」(以下「人材バンク」)への登録でした。私はそれまで情報システム部門、総務部門では人事・総務や環境整備、工場管理という経験を積み、その後当時の三菱農機株式会社で監査役を務め、それらの積み重ねた知識をもう一回どこかで活かしたいと考えて人材バンクに登録いたしました。そして小林社長が人材バンクを活用され私に声を掛けていただいたのですが、非常に丁寧なお手紙までいただいたことをよく覚えています。
 監査役就任を決めたのは、一つには実際に3回の面談を経た中で、事業そのものが非常に環境に配慮されており、持続的な社会に資する事業だと感じたことです。二つ目は、ビジネスモデルがお客様にとって非常に有益な、お客様の方を向いたビジネスだなと感じたことです。加えて、小林社長は当時から高い成長性を望んでおられ、このような成長性の高い企業で仕事をしてみたいという思いもありました。そして、一番大きな決め手は小林社長の誠実さや真摯さが節々から感じられたことです。

―新しいビジネスのお会社に社外常勤監査役として就任される方の中には、ビジネスモデルがなかなか理解できなかったり、前職と全く畑が違うと感じて悩まれたりする方も多いと思いますが、そうした抵抗や不安はなかったのでしょうか。
山﨑氏 企業の内部統制やコンプライアンスというものは、業種が違っていてもその基本の部分は同じだと思っておりましたので、業種が異なることに対しての抵抗感は余りなかったです。
小林氏 山﨑監査役は、当社のようなスタートアップの会社にとって知見の少ない部分を豊富に経験されていらっしゃいます。また、当社がこれから全国に拠点展開を広げていこうという中で、机上の理論だけではなく現場・現物・現実の三現主義という考え方や、ご自身が前職で培われたリアリティのある実査の体験談を聞かせていただきました。加えて、ネット型リユース事業というITを基盤とした事業展開をしていくに当たり、その領域にも精通しておられたことも大きかったです。お人柄もすばらしく、経験と人柄の両面が両立される方と出会えることは希有な機会だと思い、是非当社に来ていただきたいとお願いしました。

1.IPO前後における監査役への期待と役割

―次に、IPO前後における監査役等への期待と役割について伺います。御社は2015年に東証マザーズ市場に上場を果たされ、2021年には東京証券取引所市場第一部(現在プライム市場)に市場変更されました。まずは、IPO達成までの御苦労や達成感など、時系列を含めて小林様から御紹介いただけますか。
小林氏 当社は創業から9年で上場を果たしましたが、現実的には業容拡大のスピードに合わせ、内部体制もスピーディーに整備していかなければいけないという状況でした。その中で山﨑監査役が就任され、その知見を活かしていただきながら、様々な改善を行いつつ、体制整備を進めていきました。また、当時は20代の若い社員が大多数を占める中で急拡大しておりましたので、改めて振り返ると、管理体制を整備するということに加えて、社員の人間的な育成に近い部分もあったと感じています。
 体制整備の面では管理部門が牽引し、常勤監査役、非常勤監査役の皆さんも含めて進め、上場準備を開始してから一度もスケジュールを変更することなくストレートに上場を達成しました。急拡大はしたものの、若いメンバーが多いからこそ、明確な理念やビジョンに沿った組織展開に重きを置いてきたため、体制整備に向けて大きなひずみが生じづらい組織だったことから、比較的スムーズに上場ルールに適合した体制が構築できたのではないかと感じています。
山﨑氏 2013年の就任当初は、当然ですが監査役会も設置されておらず、その後2014年に監査役が3名体制になり、会計監査人も設置されて体制が確立されました。上場に向けては、最初に監査役監査基準や監査役会規則の作成に取り組み、その際に参考にしたのが、協会が公表している「監査役監査基準」、「監査役会規則」のひな型でした。まず規則をしっかりと作り、その次に監査役としての体制を整備しなければならなかったので1年間の監査計画を策定しました。
 計画に従って、まず当時の4拠点に対する業務監査を始め、また監査役会としてのルーティンとして、社長との定期面談を設定し、併せて会計監査人とのコミュニケーションをしっかりと取るようにしました。情報収集の点では、管理部長に様々な情報が入りますので、その情報の詳細を共有する週次ミーティングを行うほか、社員の日報を閲覧し、現場の情報収集を行っていました。
 業務監査は非常に重要で、上場前に不祥事を起こしてしまうとスケジュールどおりにはいかないわけですから、まず法令の遵守にしっかりと対応できているかを注視しました。当社において遵守すべき一番重要な業法は古物営業法で、これに準拠した処理が各拠点でできているかどうかを徹底的に見ていたのが上場を目指していた当時の対応でした。

―続きは月刊監査役777号(2025年7月号)をご覧ください。

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