監査役制度

監査役とは

監査役とは  

2007年3月
東京大学 教授
神田 秀樹
 

 日本の会社法上、非公開会社かつ非大会社と委員会設置会社を除いて、監査役は株式会社の常設機関である。監査役制度は戦前から存在したが、1950年の商法改正で監査役の権限は縮小された。しかし、1974年、1981年、1993年、2001年の一連の商法改正によって、監査役の権限と独立性が広範囲に強化され、監査役制度は現在の姿になり、それが2005年会社法にも引き継がれている。以下では、監査役会の設置が義務づけられる大会社かつ公開会社について述べる。

 監査役は株主総会で選任され、取締役の職務の執行を監査することがその役割である。監査には、業務監査と会計監査とが含まれる。業務監査は、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することで、一般に適法性監査と呼ばれている。

 会計監査は、定時株主総会に計算書類が提出される前に行われ、株主総会の招集通知時に、会計監査と業務監査の結果が記載される監査役会の監査報告が提供される。2002年の改正で導入された連結計算書類についても監査が行われ、監査役の監査の結果が定時株主総会に報告される。

 大会社(最終事業年度の貸借対照表上の資本金の額が5億円以上または負債の総額が200億円以上の株式会社。実際には約12,000社存在する)については、監査役制度が強化されている。大会社かつ公開会社であれば、監査役は3名以上必要で、かつ常勤の監査役が最低1名必要であり、また社外監査役(その定義は後述)が監査役の数の半数以上必要である。そして監査役会が設置される。

 監査役は、株主総会の決議で選任される。選任決議の定足数は総株主の議決権の3分の1を下回ることができない(取締役の選任決議と同じ)。なお、取締役と同様の欠格事由があるほか、監査役はその会社または子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人を兼務することはできない。

 監査役は、他の監査役の人選につき株主総会で意見を述べる権利を有する。また、監査役を辞任した者は、その後最初に招集される株主総会に出席し意見を述べる権利を有する。他の監査役も同様である。
 監査役会は、取締役会による監査役の選任議案について同意権を有し、また監査役の選任議案の提案権を有する。

 監査役の任期は、取締役(2年)と異なり4年である。

 監査役の報酬は、取締役の報酬と別に、定款または株主総会決議で決定される。

 大会社かつ公開会社では、監査役は3名以上であることを要し、かつ常勤の監査役を定めなければならない。また、監査役の半数以上は、就任前に会社またはその子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人でなかった者でなければならない(社外監査役)。そして監査役会が設置される。したがって、大会社かつ公開会社では、日本のボードシステムは2層制であるということができるが、ドイツのシステムとは大きく異なる。

 監査役と会社との関係は委任である。したがって、監査役は、職務の遂行に際しては、会社に対して善管注意義務を負う。監査役の職務は、取締役の職務の執行を監査することであり、この監査には業務監査と会計監査とがある(なお、非大会社かつ非公開会社では会計監査に限定されることができるが、この場合については省略する)。業務監査は、取締役の職務の執行が法令・定款を遵守して行われているかどうかを監査することで、一般に適法性監査と呼ばれている。ただし、法令には善管注意義務も含まれるので、取締役の経営判断にかかわる事項についても、善管注意義務違反がないかどうかを監査することになる。会計監査は、計算書類およびその附属明細書を監査することであるが、証券取引法上の監査とは異なり、定時株主総会の前に実施される事前監査という点に特徴がある。定時株主総会の開催2週間前までになされる招集通知時に、会計監査と業務監査の結果が記載された監査役の監査報告が提供される。証券取引法適用会社は同法により連結財務諸表の作成が義務づけられるが、会社法上も連結計算書類の作成が義務づけられ、これについても監査役の監査がなされる。

 監査役には、これらの職務を遂行するために、法律上の様々な権限が与えられている。

(1)報告要求・調査
 監査役は、いつでも取締役および使用人に対して事業の報告を求め、また会社の業務・財産の状況を調査することができる。取締役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合には、監査役からの要求がなくても、直ちに監査役会にそれを報告しなければならない。また、監査役は、一定の要件のもとで子会社に対しても報告を要求し、その業務・財産の状況を調査する権限を有する。なお、監査(調査を含む)に要した費用は会社が負担する。

(2)取締役の違法行為の阻止
 監査役は、取締役会で違法または著しく不当な決議がなされることを防止するために、取締役会のすべての会合に出席しなければならないし、必要な場合には意見を述べなければならない。また、取締役会の場に限らず、取締役の不正行為またはそのおそれ、法令・定款違反または著しく不当な事実があると認めた場合には、遅滞なく取締役会に報告することを要し、必要があれば取締役会の招集を求め、または自ら招集することができる。そして、そのような決議または法令・定款違反の行為を防止または是正することができなかった場合でも、取締役が株主総会に提出する議案・書類に法令・定款違反または著しい不当性があれば、株主総会にその調査の結果を報告することを要する。また、取締役の法令・定款違反の行為の結果、会社に著しい損害が生じるおそれがある場合には、取締役に対してその差止めを請求することができる。その他、株主総会の決議取消しの訴えなどの原告適格が認められる。

(3)会社・取締役間の訴訟
 会社・取締役間の訴訟は、監査役が会社を代表する。したがって、会社が取締役を訴えるかどうかの判断も監査役が決定する。また、取締役に対する株主からの提訴請求を受けるのも監査役である。監査役には、株主代表訴訟が提起された際に、会社が被告取締役側に補助参加することについての同意権が与えられている、取締役の責任軽減に関する同意権が与えられている。

(4)会計監査
 会計監査とは、計算書類およびその附属明細書を監査することであるが、大会社かつ公開会社では、公認会計士または監査法人を会計監査人として選任しなければならない(株主総会で選任するが、取締役会による選任議案には監査役会の同意を要し、また監査役会は選任議案の提案権を有する)。したがって、大会社では、会計監査は第1次的には会計監査人が実施し、その監査報告は監査役会と取締役会に提出される。監査役は、会計監査人の監査の方法・結果の相当性を判断する。もし相当でないと認めた場合は、自ら監査したうえで、その結果について監査報告に記載する。なお、会計監査人は、取締役の職務遂行に関し不正行為や法令・定款違反の重大な事実を発見した場合には、遅滞なくそれを監査役会に報告しなければならない。また、監査役は、必要があれば会計監査人に報告を求める権限を有する。以上のように、大会社かつ公開会社では、監査役は米国の監査委員会と同様に、会計監査を実施させることが職務であるということができる。定時株主総会の招集通知時には監査報告が提供され、会計監査および業務監査の結果が記載される。監査報告は大会社かつ公開会社では監査役会が作成するが、各監査役は自分の意見を付記することができる。連結計算書類についても監査が行われ、監査役会の監査報告が作成される。

 監査役は、会社に対して善管注意義務違反その他の任務懈怠があれば損害賠償責任を負うほか、職務の遂行に際し悪意または重過失があった場合または監査報告に虚偽記載があった場合には、第三者に対しても損害賠償責任を負う。

 

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