監査役インタビュー

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No.16(04年7月) 株式会社島津製作所 常勤監査役 蛭﨑 淳文さん


テーマ:改定「監査役監査基準」の実務展開について(2)


kk_0407_photo1.jpg  私どもでは、これまでの監査業務活動の蓄積を、実務的に具体化・明文化したものに作り変えたいと考えておりましたところ、日本監査役協会の改定「監査役監査基準」の趣旨が私どもの考えている方向とほぼ一致しておりましたので、この4月1日に「島津製作所監査役監査基準」を協会の改定基準に沿って改定いたしました。今回の改定は今までもやらなければならなかった監査役実務を明確に明文化したものと捉えていますので、基準の趣旨にあります「評価される監査」をどう考えるかは別としても、「透明性のある監査業務」、「責任のとれる監査役」ということは当然のことではないかと思っています。   

《インタビュー》

御社では2月に協会の改定監査役監査基準が公表されてから最も早いタイミングだと思われる4月1日に監査役監査基準を改定されていますが、なぜ早い改定が可能となったのか、御社の監査役監査基準改定の経緯を教えてください。

 島津製作所では、平成6年6月に初めて監査役監査基準を制定し、その後3回ほど改訂していますが、商法改正に伴って、また日本監査役協会の基準改訂にあわせて部分的に改訂して参りました。
 一方で、監査のあり方に関する司法判断などが今日までに充分蓄積されてきており、それらを具体的に明文化した監査基準が必要だと考えておりましたところ、昨年12月、日本監査役協会で改定監査役監査基準の草案が公表されましたので、それを拝見し、以降具体的な検討に入りました。
 協会の草案と私どもの考えていた監査のあるべき姿に対する方向性が基本的に一致していたことが、協会の改定基準をベースにして改定作業を始めたきっかけとなったわけです。
 協会で監査役会規則の改定があるのでそれを待ってからの方がいいのではという意見も一部拝聴しましたが、私どもの監査役会規則を検討したところ重要な部分では支障がないと判断されましたので、先に監査役監査基準を改定することといたしました。

 実際の改定作業としては、島津製作所には常勤監査役が2人おりますが、その2人の常勤監査役と1名の監査役スタッフとで、12月に公表された協会の改定基準草案と従来の島津製作所の基準とを比較検討いたしました。その結果をもとに1月の監査役会で改定方針を提案し、非常勤監査役を含めた監査役会の了解を得ました。その後1月~2月にかけて、実務ベースで個々の条文の改定作業に取り組み、2月の監査役会に改定案を提出することが出来ました。

 改定基準を実効性あるものにするために業務執行側の理解を得ることが必要ですので、3月初旬に、代表取締役会長・社長に説明を行い基本的了解を得ました。改定が広範囲に亘っておりましたので、社長には再度3月後半に説明の機会を設け最終的了解を得、その後、臨時監査役会を招集して4月1日実施を決定しました。
 また、会計監査人に協力を求める部分もありますので、会計監査人にも説明を行い、4月の取締役会で、取締役全員に基準改定についての説明を行いました。

順調に改定作業を進められたのですね。

kk_0407_photo2.jpg 私は昨年の6月29日の総会で監査役に任命されたわけですが、他の新任監査役さんと同様に「監査業務とはなにか」というところからスタートしました。
 監査役に就任してからは、日本監査役協会の研修会に欠かさず参加し、先輩の監査役からアドバイスを頂いたりして、監査役業務とは何ぞやとか、島津製作所の監査レベルはどのあたりにあるのかということがなんとなく判ったなと思ったときに、当社のもう1人の常勤監査役に監査業務の改善提案をいたしました。
 1年は経たないと本当の監査業務がわかったとは言えないと思われるかもしれませんが、私は業務執行の時代から「改革とは3ヶ月以内に行うべし」と常々考えておりまして、監査業務の改善提案をするのであれば、9月までに行おうと決めておりました。実際9月にもう1人の常勤監査役(私より1年先任)に提案しましたところ、先輩監査役も同じ思いを抱いておられたようで、提案に賛同頂きました。そこで常勤監査役2名の連名で監査業務改善を業務執行に提案することにしたのです。
 そして、10月に代表取締役社長・会長に提言をし、基本的な理解を頂戴しました。その時点から改善できる事項については順次改善のスタートを切っています。
 この10月の段階では「妥当性判断(経営判断の原則)の監査」について議論がありましたが、その後理解をいただき、「経営判断原則に基づく監査」という表現に統一した基準改定の段階では、業務執行から特段の異論は示されませんでした。

 私どもが業務執行に提案した改善項目は8項目ありました。
業務執行と関わる事項が4項目、監査役自らの監査活動に関する事項が4項目でした。詳細は省略させていただきますが、
業務執行との関連事項として
 ①監査の透明性向上
 ②重要会議への参加改善
 ③内部統制システムの確立
 ④代表取締役との意思疎通向上
監査役自身の監査活動に関して
 ①監査役活動の効率化、有効性、透明性向上
 ②会計監査人との連係強化
 ③重要書類の閲覧ルールの再確立
 ④社外監査役の役割強化
の計8項目を提案いたしました。

 先ほどよりお話している通り、これら8項目の改善内容と12月公表された協会草案がかなりの部分で一致しておりましたので、協会の改定基準を全面的に採用したいと考えた次第です。基準改定に先立つ、監査役間、監査役・業務執行間のキャッチボールが、今回の基準改定作業が順調に出来た要因の一つであったかと思います。

 一方で、日本監査役協会の改定基準に示された監査像は、目指すべき監査像としての理想像が一部含まれている感じを持ちました。そこで、それを私どもの現実の監査とどう調整していくかを検討しました。すでに実施できていること、すぐに実施すべきことと、実現するのに課題の解決が必要で時間がかかる部分と区分けし、後者は先送りにしました。
 形式上の基準改定実現を再優先した次第ですが、最終的には、条文の表現を一部ソフトに変更しました他は、協会の改定基準の主要な部分は取入れられたと思います。


改定基準の具体的なお話を伺いたいと思いますが、まず、御社の内部統制システムについて教えてください。

 島津製作所には、事業部ごとの縦の組織があります。加えて、営業、製造、技術の横串の組織を持っておりまして、マトリックス経営をとっていますので、従来から内部統制はきちんと出来ていると考えられてきました。そのため、独立して別の内部統制の組織を持つ必要はないとし、独立した内部統制組織は存在しません。
 既存のいわゆる管理部門が、それぞれの役割に応じ内部統制機能を持ち、活動するシステムです。しかし、それだけでは、CSR等企業を取り巻く環境変化に柔軟な対応力を欠き、内部統制上のエアーポケットが生ずる可能性が出てくると思われます。私は、別組織を作ってモニタリング機能を持たせることが必要であると強く考えております。


内部統制システムは経営サイドが構築する責務を負っているわけですが、監査役としてどのように関わっていくべきだとお考えですか。



kk_0407_photo3.jpg 当社には既存の内部統制システムと並行して、ISO、薬事法など外部から要請されて監査業務を実施している部署がいくつもあります。それらの監査組織を活用できるように、そこからの報告を受けるようにしました。

 また、今期より内部統制機構をもっている部門のトップからその部門のリスクはどこにあるのか、それをどうコントロールするのか、そしてそれをどのようにフォローしていくのか、という内容のヒアリングを行うことにしました。これを継続的に実施することにより、内部統制機能をさらに向上させていきたいと考えています。

 一方当社では、効率的な監査が行えるという観点からセルフオーディットシステムを採用しようと計画しています。各事業部のビジネスユニットごとにリスクをリストアップし、それをレーティングし、コントロール策をたて、実施し、フォローする仕組みを作りWeb上で管理するというシステムです。すでに一部部門での試行を終え下期にかけてスタートする段階にあります。セルフオーデットとは自己監査ですので、所属員の意識向上には有効であり、ある程度の効果は期待できるとは思いますが、個人的にはこれだけでは足りないのではないかと思います。最終的には、モニタリング機能を持つ専門の内部監査部門を持つことが必要だと思います。
 監査役としては、このことをしっかりと業務執行に申し入れていくつもりです。
 監査役の監査には、内部統制システムがきちんと機能しているかどうかをチェックすることが必要になると思います。往査、ヒアリング等を通じて、内部統制システムのレベルアップに寄与していきたいと考えています。


監査役会の機能を強化するために行っていることは何ですか。

 私どもの監査役会は、原則月1回、取締役会とは違う日に開催しています。非常勤監査役も全員出席できるように日程調整をしておりますので、基本的に全員出席しています。監査役会では、議長を定め、法令・定款・監査役会規則等で定められた決議の他、往査の報告を1~3時間行い監査役の情報共有化を図っています。また、取締役会議事で必要な場合には、監査役は独任制ではありますが、事前に監査役協議を行い監査役会としての意見を取りまとめることもあります。
 監査役会とは違いますが、前期から新しく追加した会計監査人との月次の定例打ち合わせには、非常勤監査役を含め必ず4人全員が出席することにしています。
 このように監査役会として機能は発揮されていると考えていますので、特段機能強化すべしという意識は現状ありません。更なる内容の充実・レベルアップを図っていくことが必要と考えます。


社外監査役の役割についての蛭崎さんのお考えをお聞かせください。


 当社の社外監査役である2名の方は、他社の監査役を長くやっていて経験豊かな方です。
ただ、企業を取り巻く環境の変化や、企業実務・システムの複雑化が増す中で、監査業務の専門性が求められ、社外監査役には公認会計士、弁護士だとかプロフェッショナルな監査役を置くのが良いという流れがあると思われます。
 一方、業務監査という視点では、一般的な企業業務に精通した監査役も必要であり、企業業務、企業経営の専門家ということも必要ではないでしょうか。
 法律、会計の専門性を補完する対策としては、監査役が業務執行とは別に顧問会計士、顧問弁護士を持つやり方もあると思います。このような社外の専門性補完組織を持つことも含めて、社内監査役も含めた監査役全体の資質バランスが必要なのではないかと考えます。
 そういう観点に立てば、言葉で言えば簡単ですが、社外監査役には社内監査役に無い視点(社外の目)からの監査をお願いすべきではないかと考えます。


≪蛭﨑さんの略歴≫
1943年生まれ。1968年東京大学経済学部卒業。同年三菱銀行入行。同行人形町支店長、町田支店長、田町支店長、神戸支店長、合併により東京三菱銀行神戸支店長参与を歴任。地方監督役。1996年島津製作所入社。1997年同社関西支社長。1997年取締役就任。2000年官庁大学本部長。2003年常勤監査役就任、現在に至る。

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