監査役インタビュー

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No.13(03年9月) 興銀第一ライフ・アセットマネジメント 常勤監査役 永井 康憲さん


「常勤社外監査役の監査実務」

kk_0309_photo1.jpg  一般的に、あまり目立つことの多くない監査役の働く姿・生の声・本音などをHPで提供していく「今月の監査役」。当協会の設立30周年を迎える今期この9月~は、一般事業会社にとっても喫緊の課題であるコンプライアンスとの関連についても、掘り下げてみることといたします。
 今期の第1回目は、興銀第一ライフ・アセットマネジメント㈱常勤監査役の永井康憲さんです。永井さんは、銀行・投資顧問・信託・生保など様々な業種の金融機関での勤務経験を活かし、一般に現場へのアクセスが難しいと思われがちな「常勤の社外」監査役でありながら、徹底的に現場主義を唱えて監査業務に取り組んでおられます。


 

《インタビュー》


社外の監査役への就任が決まった時のことを、おきかせください

 元々当社の前身の1つだった興銀NWアセットマネジメント(後に第一ライフ投信投資顧問と合併し、現在の会社に)での経験も含めて約8年弱の間、ファンドマネージャー(運用)の仕事をしておりました。そういう意味では、当社の業務の基本の部分については土地勘があり、親近感のある会社でしたから、形は「社外」ですが入り易いポストでした。実際に今まで業務をやってきて、あまり大きなサプライズはなかったですね。


日常の監査役としての業務について、ご紹介ください

 結構、忙しいですね。期末の監査の時を別として日常の監査業務ですが、社内の情報が沢山mailで届きますので、朝、出勤するとまずmailを読みます。内容によっては、緊急性があり監査役としてもすぐに調査しなければならない案件もありますので、その時はすぐに動きます。他に毎日、稟議書の閲覧をしています。稟議書は月に100件以上で結構な量があり、すべての内容を確認するのは正直に言って大変ですが、現場がどんなプロセス管理を行っているかが判りますので、非常に勉強になります。本監査年度は「内部統制の有効性の評価と建設的な提言」を重点監査テーマとしていますので、実効性のある具体的な提言を取り纏めるのにも大変、有効です。また重要な会議への出席と意見陳述ですが、月次で取締役会・経営会議へ出席する他、各種の委員会にも出席し、努めて意見を述べるようにしています。その他の会議にも陪席しますし、一部のG(グループ)リーダーとは月次での意見交換会を定例化していますので、日程的にはそこそこ詰まっています。
 常勤監査役は2名おりますが、会議には一緒に参加するなど、できる限り2人一緒に行っております。もちろん分担は決めてありますが、それは忙しくて一方しか対応できない時や、情報が高度・専門的で複雑なので今までの知識・経験だけでは対処しく勉強が必要な場合に、と考えております。
 監査役会は月1回で、基本的に取締役会の開催前、その日の午前中に開催しております。監査役会は審議事項が多く、例えば7月は、会計監査人からのファンド監査の実施報告・今年度の監査計画の概要・スケジュールなどがあり、午前中一杯かかりました。月によってばらつきはありますが、平均すると1時間くらいでしょうか。
 また常勤の監査役同士の連携については、同じ部屋に2人とも机を並べておりますので、日常的に活発に情報交換・意見交換をしています。重要な案件があると取締役・各Gリーダーからも連絡がありますし、また内部統制の有効性の改善のための提言内容を取り纏めるにあたっての事実調査には、それなりの時間をかけています。もちろん常勤のどちらが提言・意見を作成しても、お互いに内容を細かく相談しています。正確に事実関係を把握して当社に適した実効性のある改善策はないものか、いくつかの考えられるオプションから選択しなければならないので、現場がどうなっているのかから始まって他社はどうしているのか、監査役協会の指針によるベストプラクティスはどうか、と確認・勉強しています。意見表明・執行部への提案内容の吟味の基準として、またベスト・プラクティスを知るには協会の基準は良い参考になります。
 全体のエネルギーの配分としては、会議への出席・意見交換・稟議書の閲覧などで、物理的には6割方の時間をとられますが、残りの4割は勉強したり提案を考え文書化したり、調査して纏めるなどに使っております。


最近、一般事業会社においても話題となっているコンプライアンスについては、どのような体制でしょうか?

 法務コンプライアンスGが4人で担当しております。部門としては完全に独立し、弊社の代表取締役には社長と副社長の2人おりますが、法務コンプライアンスは副社長の直轄となっております。ちなみに内部監査Gは社長の直轄です。
 業界の特性としては、もちろん株式会社なので商法が重要なことは言うまでもありませんが、いわゆる業法関係もありまして、弊社の場合には投資顧問業と投信と両方やっていますので、投資顧問業法・投信業法と証取法など関連する法令が多くあります。ご存じのように投資顧問業法・投信業法は条文・内容が重いので、実務上のプラクティスとして咀嚼し定着させていくということがバックオフィスの最も大事なポイントとなってきます。そうしないと法令に対するリスクコントロールができません。また、日々の売買などの活動についてのコンプライアンス事項が沢山ありますので、コンプライアンスに対しては機能的には、相当なボリュームの機能発揮が期待されております。
 金融業界の全般的な傾向ではありますが、事業環境が厳しい折にもかかわらず、内部監査・コンプライアンス系統に人間を割いております。私が若い頃は「そんなコストをかけられるか」という意識が一般的であったようにも思いますが、その後、経営の認識が変わってきており「かけなければならないコストである」という位置付けになっております。そういう意味で、当社のリスク管理体制は人員としても不足なく、それなりの水準だと思います。ただ業務内容は変革期にあり、かなり変わってきているので、相当に前向きに活発な活動をして貰わないと中々チェックし切れない、という面があるかと思います。内部監査G・法務コンプライアンスGについても頭数の問題ではなく、スキル・水準が大切ということだと思いますので、この観点から当社のスタッフを見ると各分野の専門知識を持った人材を配していることから、比較的に厚い手当ができているかと評価しております。


監査役との業務の関係については、いかがですか?

 毎月1回、監査役会と内部監査G・法務コンプライアンスGおよび企画調整G・運用企画Gの各リーダーとで、意見交換会を開催しております。それとは別に、コンプライアンス委員会ではコンプライアンス報告などがありますので、そこでも情報が入ります。
 監査役はトップマネージメント関係の重要な会議に出席しておりますが、現場からの情報に関しては会議では少なく、逆に法務コンプライアンス・内部監査Gは現場の情報は多いのですが経営サイドの情報が少ないので、相互補完的に良いのではないかと思います。現場の実情をよく知らないと、結果として実効性のある提言ができない訳ですが、実効性・説得力ある監査のためには積極的に現場に赴き現場を正確に理解する必要があることから、この4者と監査役会との定例の会議は非常に有益なものとなっております。


代表取締役その他、執行部との関係については?

kk_0309_photo2.jpg 冒頭の説明として少し触れておりますが、稟議書のうち、取締役の決裁は全件、また各Gリーダー決済のものもほぼ全件、執行部の後で閲覧しておりますので、今どんな案件が決裁されているかという貴重な情報が把握できます。また、担当取締役や主なGリーダーとは毎年1回、監査年度が始まる時に課題と対応ということで、監査役会として1人90分ほどヒアリングしております。つまり先程の月例の会議・委員会・定例会、稟議書の閲覧、年1回の全取締役およびGリーダーへのヒアリングが、主な情報源となっております。
 また年1回の全取締役ヒアリングとは別に、社長・副社長と監査役会との懇談会を年に3~4回ほど開催いたします。その際は、監査役の日常の監査などで気付いた点を指摘し、具体的・建設的に改善策を提言するようにしております。現に、今までにも広い範囲で具体的に提言して参りましたが、常に100%回答という訳ではないにせよ、提言を真摯に前向きに聞き入れて貰い、ほとんど実施して貰えました。やはり現実的で建設的な改善提案であることが最も重要であろうと思います。逆に、トップダウン的な観念論から入ってしまうと、話としては理解して貰えるのですが「具体的には何か」という次元では、最終的には意識の問題になってしまいます。意識の問題というのは、議論はできますが実効性がない、それでは企業価値の増大には繋がらないですよね。
 もちろん監査役は(コンプライアンス・リスク管理としての)ベストプラクティスというものを勉強して、できる限りベストプラクティスに近付くように「ベストプラクティスは、こういうものですよ」と提言いたしますが、それだけでピリオドを打ってはいけないと思います。実際に判断するのは執行部なのですが、それでも監査役としてはできるだけ噛み砕いて「これがベストプラクティスなので、これに近付くためには当社としてこういう方法があるのではないですか」というところまで詰めたうえで提言することが大切ですね。最も怖いのは現場からの遊離ですから。


≪永井さんの略歴≫
1948年 広島県出身。71年 東京大学法学部 卒業。同年 (株)日本興業銀行 入行、国際営業第2部・国際投資室・興銀投資顧問(出向)・調査部・シンガポール支店長、興銀信託銀行の取締役を経て、2001年1月 同行退職。同年 ハートフォード生命保険(株)取締役COO(~2002年11月)、2002年11月 興銀第一ライフ・アセットマネジメント(株)常勤監査役に就任、現在に至る。趣味は水泳、囲碁、読書(古代史)。

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