監査役インタビュー

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No.11(03年5月) 三菱化学MKV 常勤監査役 松井 武久さん


「リスクマネジメント、環境監査」

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 一般に余り知られていない監査役の働く姿や、生の声などの情報をHPで提供していく「今月の監査役」。
 第11回目は、環境監査研究会でご活躍の三菱化学MKVの松井さんです。松井さんは技術畑出身(技術士資格者)で、三菱化学グループの経営や生産技術に関するアドバイザーの他、環境保全の推進にも尽力されてきました。また、環境監査については、当協会内部統制研究会の成果を応用した独自の監査を確立されています。今回は、リスクマネジメントや環境監査等について伺ってみました。
 

《インタビュー》


監査役として心がけられていることはありますか?

 ;監査役に就任した際に、まず、なぜ企業不祥事が起きるか、また自分の特性を活かした監査をするにはどうすればいいかを考えました。適法性は当たり前ですので、私の場合、経営リスクマネジメントにおける予防監査を心がけました。前回の監査役全国会議で、私が長年考えていたことと同内容のことを、中坊弁護士や吉井会長が発言されましたので、勇気がわきましたね。やはり、問題がおきた際、表面的な現象ばかりを指摘しても仕方ありません。なぜおきたのかという構造的問題点を追求することが監査の要だと思います。ですから、妥当性監査には、ブレーキ型の監査役はいりません。必要なのはアクセル型の監査役です。


経営リスクマネジメントといいますと?

 ;企業を取り巻く環境変化の3大要素である、国際化、エコロジー、IT、これらの変化から生じる経営リスク管理を如何に監査に盛り込むかが課題でした。そこで、経営リスクマネジメントに関するマニュアルやチェックリスト、また取締役マニュアルなどを作成しました。そこには「監査役を理解する必要がありますよ。」というようなことも書きました(笑)。理解がなければ、監査役と執行部との相互の信頼関係は築かれません。
 ;当社の場合は、塩ビを主に扱っていますから、環境が最も重要な経営リスクです。ですから環境リスクマネジメントのマニュアルをすぐに作成しました。その際に大変参考になったのが、COSOの内部統制の考え方を充分に研究した『月刊 監査役』430号の報告書です。監査役監査だけではリスクを予防できません。これを読んで、内部統制の充実が非常に重要であることを痛感しました。ちょうどその頃、協会の環境監査研究会のお話があり、参加させていただくことにしました。


御社の内部監査についてお話下さい。

 ;専門の内部監査部門はありませんが、各機能を持っている部署がそれぞれ対応しています。例えば財務会計関係は経理が行い、環境部門は環境保安室が行っています。監査役は、これらがうまく行われているかどうかを監査するのです。ただし、その際は私も必ずその場に立ち会い、棚卸しや各種書類などに問題がないか監査しています。煩わしく思われるかもしれませんが、その場で担当者に意見することもあります。勿論監査役ですから強制力はありません。ですから、あら探しではなくアドバイスするように心がけています。そういう意味で、当社の場合、専門の監査役スタッフはおりませんが、社員全員がスタッフだと思っております(笑)。


経営リスク監査を通じて、監査役としての生き甲斐を感じられることは何ですか?


kk_0305_photo2.jpg ;社長に信頼され、意見を聞かれた時です。特に何かを提言した際に、社長から「大いにやろう」と言われた時でしょうか。 大変やりがいを感じますね。また、取締役になかなか受け入れてもらえにくいようなことについて、社長から支援を頂くこともありました。私は恵まれていますね。
 ;協会や三菱化学グループ、またその他いろいろなところでお話しする機会があるのですが、そんな時に他社の監査役や担当者からいい評価をいただく時もうれしいですね。講演後のやりとりから、新しいおつきあいがうまれることも大変嬉しいことです。


会社に提言されたことで、何かエピソードはありますか?

 ;そうですね。監査役の意見を受け入れてもらって、問題を最小限に食い止めることができたことがありました。これは以前、業務監査報告書に指摘したことが、実際に問題となった時のケースです。放置しておくとPL法の問題に発展する可能性もある案件でした。発覚後すぐに問題の性質をオープンにし、早急に問題原因の究明とその対処するよう社長にお願いしたところ、社長も同じようにお考えだったようで、すぐに臨時取締役会が開かれて専務を長とした専門委員会が組織されました。対応が早く内容をオープンにしたことで、問題を指摘されたお客さんにも満足していただけました。
 ;こういった時に重要なのは、何月何日に何を行った、何を提言した、ということを活字にして残すことです。口頭で説明しても形に残りません。活字というのは責任を明確にしますから、その力というのは大きいと思います。


協会について一言お願いします


kk_0305_photo3.jpg ;全体的に商法の勉強に偏りすぎているような気がします。企業の不祥事の原因究明と抜本的対策について研究会を作ってみてはいかがでしょうか? 根本的な問題は、商法云々よりも経営者の「企業倫理」にあることが少なくないと思います。
 ;去年より始められた「社外監査役の候補者リスト」作りですが、この仕組みを発展させ、実力と倫理観をもった優れた監査役を各社に派遣し、会計監査人や取締役以上に社会一般や企業経営者から信頼されることが一番望まれていると思います。


≪松井さんの略歴≫
1943年生まれ。1966年三菱化成(現 三菱化学)入社。機械技術関連の仕事に携わる。1988年同黒崎工場エンジニアリング部長、1997年三菱樹脂生産技術部長、1998年同取締役を歴任後、2000年三菱化学MKV常勤監査役に就任。本年より独立行政法人農業生物資源研究所非常勤幹事を務める。技術士。社外活動として、早稲田大学「大学における知的財産権研究プロジェクト」委員、財団法人産業創造研究所「高度設備管理技術支援基盤構築調査研究会」委員、技術士協同組合TLO研究会参加、並びに当協会環境監査研究会メンバーとして活躍。環境問題、エネルギー問題にも詳しい。

〈三菱化学MKV〉
ビニールハウスのフィルムをはじめとした農業資材、合成樹脂コンパウンド、産業用フィルムを製造しているメーカ。1983年設立。

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