監査役インタビュー

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No.10(03年4月) 阪神電気鉄道 常任監査役 澤田 邦昭さん


「グループの監査」

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 一般に余り知られていない監査役の働く姿や、生の声などの情報をHPで提供していく「今月の監査役」。
 第10回目は、関西支部研究会幹事として、日本公認会計士協会関西地区三会との共同研究をまとめ、「継続企業の前提に関する監査役と会計監査人との連携(中間報告)」を先日発表された阪神電鉄の澤田さんです。澤田さんは技術畑出身(技術士資格者)で、電車も設計されています。また阪神タイガース球団代表も5年以上お務めになりました。幅広いご活躍の澤田さんに、共同研究の中間報告や、阪神電鉄グループの監査について伺ってみました。

《インタビュー》


3月6日の日本経済新聞に取り上げられた日本公認会計士協会関西地区三会との共同研究中間報告書が好評を博していますが

;監査役と会計監査人との連携を通して、相方が協力し監査の質を上げていくことがこの中間報告の狙いです。監査役は会計士から報告を求める権利がありますし、また会計士は何か問題があったら監査役に報告しなければならない義務があります。しかし、ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)は必ずしも財務諸表を見るだけでわかるものではなくて、むしろ取締役会などに出ている監査役の方が先にわかることもあります。その辺は監査役が判断しなければいけませんが、会計監査人に情報を提供することは大事だと思います。今回はたまたま会計士と監査役との共同研究会でしたけれども、内部監査部門についても気が付けば「この辺を調べてくれ」ということを監査役から言うべきです。三様監査と呼ばれる監査役、会計監査人、内部監査人の情報交換が大事だと思います。
;今回の報告書では、チェックリストを一番活用して欲しいですね。チェックリストをご覧になると、普段からどんなところに注意しなければならないかが分かるようになっています。債務超過になってしまっては、監査役としてどうこう言うことは何も無いですからね(笑)。


往査を増したそうですが、これもやはり情報収集のためでしょうか?


;監査役協会の実務部会に入れてもらったのですが、先輩に話を聞いたところ事務所に座っていたのでは本当のことは分からないと言われました。現場の話を聞かなければならないと言われたのがきっかけですね。実際に私は若いときには電車を製作する会社に、監査役になる前は阪神タイガースに出向していましたが、やはりグループ全体を把握するためには、各グループ会社が何をしているのかを把握しておいたほうが良く、その為にはまずその会社へ行って話を聞くのが効果的と思います。


阪神タイガースも監査の対象に?

kk_0304_photo2.jpg ;球団代表の経験から野球には詳しいということになっていますので、野球に関しては意見を求められます。以前、ある選手の入団交渉に関し、長期的に高い報酬を与える契約を結ぶのであれば、保険をかけた方が良いですよと意見したことがあります。人間のことですから、怪我をすることもあります。万一、長期間ギャランティしても働けないということがあっては問題です。結局その選手の入団はなかったのですが、それで良かったと思います。


いわゆる「妥当性監査」に踏み込んでいらっしゃいますね

 ;確かに「適法性監査」、「妥当性監査」という言葉がありますが、私はあまり好きではありません。この頃では「適法性監査」を「健全性の監査」、「妥当性監査」を「効率性の監査」と言うようですが、こちらのほうが好きですね。当社は適法性の監査をしなくても良いような堅い会社ですから、問題となるのは寧ろ効率性です。取締役とは異なった視点から「効率性」を吟味してみると、今までは見えなかった問題が見えてくることが少なくないと思います。実際には、赤字部門など問題のありそうなところを重点的に見ているのですが、今までも「ここが問題」と言ったところが実は問題ではなく、別のところが問題だったりしたことがあります。


「効率kk_0304_photo3.jpg性監査」を実践するには、相当数の会計書類に目を通さなければならないのではないですか?

;当社の監査役は以前から会計伝票は全部見ていますが、無償の利益供与に該当することは事前に監査役が伝票に印鑑を押さないとお金が出ないようになっています。伝票をまとめて1ヶ月分を1日かけて常勤監査役2人で見る日がありまして、今日も昨年の11月分を見ていました。目を通す会計伝票は、年間に約2~3万枚になります。中にイレギュラーなものがあり、月に数件ですが担当者に尋ねてみることもあります。問題になるようなものはありませんが、丹念に会計書類に目を通していると、弁護士費用が出ているものも目に入ったりします。ここから訴訟をやっていることが分かります。


技術に始まり、経営や球団代表と様々な人生経験をされてきましたが、これらの経験は監査役の仕事にどう活かされていますか?

;監査役は会社全体を監査の対象としておりますので、様々な分野の方々と人付き合いができたということでしょうか。入社して約30年、技術屋本来の仕事をしてきましたが、その後は事務の分野である運輸部長や阪神タイガースの球団代表、また子会社である六甲摩耶鉄道の社長等の経験を通して色々な分野の人と広く付き合うことができました。「まっとう」に仕事をすれば、案外どんな世界にも通用するような気がしますね。これは監査役の仕事にも役立っているかもしれません。


≪澤田さんの略歴≫
1941年生まれ。1964年阪神電気鉄道入社。車両部で電車車輌の設計等に携わる。1988年鉄道事業本部運輸部長、1990年阪神タイガース常務取締役球団代表、1997年六甲摩耶鉄道代表取締役社長、1998年阪神電気鉄道監査役就任。著書『製品責任問題』共著(大阪工業会発行1977年)。日本機会学会正会員、技術士(機械部門)。摂南大学講師、大阪高等技術研修所工研会代表幹事、大阪高等技術研修所講師等を歴任。趣味は川柳・連句。

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