監査役インタビュー

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No.2(02年8月) 丸大食品 常勤監査役 富岡 康さん


「食品業界の監査役」

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 一般に余り知られていない監査役の働く姿や、生の声などの情報をHPで提供していく「今月の監査役」。
 第2回目は丸大食品監査役の富岡康さん(監査役歴9年)に登場していただきました。富岡さんは、常勤の社外監査役(金融機関出身)。
 O-157やBSE問題以降、「食の安全性」やモラルについて注目されている食品業界。常勤社外の目から見た監査とは、一体どういうものなのか。また、社外監査役としての存在が会社に意識されるようになるまでの過程を紹介していただきました。    


《インタビュー》

社外監査役として特に気を配っている監査とは?


;商法は言うまでもありませんが、食品衛生法や業界大手の一員と言うこともあり、独占禁止法違反のおそれがないよう特に気を配っています。食品衛生法については、内部統制の整備など主に取締役としての善管注意義務がないよう監査しています。
;また、1958年創業の弊社独自の問題ではありますが、会社の成長が急だったために需要を満たすことに目が奪われ、組織や管理上充分ではない部分がありました。このいわゆる「成長期の管理リスク」にも留意しています。具体的に言いますと、会社の意思決定のあり方、予算制度、内部統制の運用状況、組織や体制の運営状況などです。社外というのはその会社の風土とは異なったものをもっていますので、社内では気づきにくいこのような不作為のリスクを客観的に指摘することができると思います。


会社の風土が違うということで見えてくるリスクについてご説明下さい

;一言でいいますと、認識の違いでしょうか。例えば、ある案件についてそれを取締役会にかけるべきか否かという判断などです。長年同じ社長の下で仕事をおこなっていますと、商法の趣旨から言うと取締役会で充分議論しなければならないような案件でも、社長の一言でそのまま通ってしまうことがあります。リスクはこういう時に発生する可能性が高いのです。こういった場合、私は社外監査役として、臆せず積極的に発言しています。もちろん、私の認識にも誤りがあるかもしれません。しかし、疑問を呈することが、私の役割だと思っています。
;風土ということを考えると、社外だから言えるということもあるのでしょう。社内監査役から「富岡さんの口からお話しして下さい」などとお願いされることもあります。異質なものを提供できるのが、社外監査役なのではないですかね。"共生"とは、こういうことなんだと思いますよ。


「認識の違い」、「社外」の存在を理解してもらうためには、ご苦労されたと思いますが...

;そうですねぇ。そういう意味では、株主代表訴訟が増えてきていることを材料に、善管注意義務違反の危険性を取締役会や社長に何度も説明しました。特に経営判断原則に基づき、充分に調査を行い審議や議論をつくすことで、代表訴訟の際のリスクを大幅に軽減できるということを理解してもらえたことが大きかったと思います。今でも、代表訴訟に関する判例が雑誌に掲載されると必ず目を通すよう心がけています。


監査役の就任を機に、大学で法律を勉強されたと伺いましたが?

;はい。就任後に日本監査役協会などが主催する法律セミナーに出席しているうちに、法律に対する興味がわいてきて、本格的に学んでみようと思うようになりました。私は経済学部出身ですので、法学士取得を目標に53歳で慶応大学法学部通信課程に入学しました。おかげで、法文に対する抵抗はなくなりました(笑)。判例を読解したり、法律を解釈したりといったテクニカルな面で、大変監査役の業務に役立っています。


社外が機能するか否かの鍵は情報収集と言われていますが、どのように対応されていますか?

kk_0208_photo01.jpg;社内情報へのアクセスについては、社内メールを活用してお客様(消費者)からのクレームや要望、経営状況を毎朝チェックしています。弊社には1日に数十件のクレームや要望 を戴きますので、それを全て確認し、監査役として問題があると判断したものを担当部署に照会すると午前中一杯はかかりますね。
;また、弊社は内部監査部門が充実しておりますので、監査部から頻繁に報告が送られてくるのですが、提出された報告書には全て目を通しています。
;常勤とはいえ社外ですので、照会したい事項があっても、誰がKey Personなのかわからないということが悩みの種ですね、最近はようやく分かってきましたが...。ですから、何か気になることがあれば、まず社内監査役に照会なり相談するようにしていますし、月に2~3回行っている往査には、できるだけ社内監査役と一緒に行くよう心がけています。


何か失敗談があればお聞かせ下さい

;監査役としての失敗談と言えるかどうかはわかりませんが、某週刊誌に弊社が品質保持期間の日付をごまかしたとの記事が掲載されたことがありました。実際、記事は間違いだったのですが、マスコミ対策について反省すべき点がありました。と言いますのは、危機管理手続はあっても、いざという時にはそのマニュアル通りに運用されないことがあるんですね。手続きの徹底や、人事管理・教育の重要性を痛感しました。


監査役や監査役制度について一言お願いします

kk_0208_photo02.jpg;コーポレートガバナンスを論じる際には、「効率性」と「健全性」とが必ず議論されますね。「監査栄えて、会社滅ぶ」となってはいけませんが、私はやはり「健全性」がベースだと思います。「健全性」が損なわれると必ず問題が発生します。無理な経営をおこなうと、不正が起こる可能性は必然的に高まります。不正が公になれば株価は落ちますし、「効率性」どころか、会社の存続自体も危うくなってきます。食品業界を巡る昨今の問題も、その根はここにあるのではないでしょうか。


≪富岡さんの略歴≫
1940年生まれ。大学卒業後、農林中央金庫の勤務を経て1993年合同酒精の監査役、1998年丸大食品の監査役に就任。1998年通信教育にて法学士取得。現在は福澤諭吉を研究する福澤諭吉協会の会員としても活躍中。趣味はスポーツ観戦。慶応大学ラグビー部の試合には、欠かさず応援に行くそうです。

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