監査役インタビュー

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No.6(02年12月) コナミ 常勤監査役  山本 哲郎さん


「エンターテイメント業界における監査」

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 一般に余り知られていない監査役の働く姿や、生の声などの情報をHPで提供していく「今月の監査役」。第6回目はゲームソフトやアーケードゲームの制作販売から、カードゲーム、玩具、カジノ用器機、スポーツクラブ経営等を主な事業内容とするコナミの監査役山本さんです。同社は執行役員の導入、社外監査役・取締役の導入等でコーポレート・ガバナンス面において最先端を切り開き、今年9月にはNY証券取引所への上場を果たしました。設立以来急成長したエンターテイメント業界の雄、コナミの監査について伺ってみました。


《インタビュー》

監査役就任が決まった時はどう思われましたか。またその後のご心境は?


;私は全く別の業界から、社外の常勤監査役として就任いたしました。業界も、会社も、仕事もすべて初めての経験でした。時代の最先端を行く業界で、抜群の業績と企業ダイナミズムを持っている会社に参加できるということで、期待に胸を膨らませて着任いたしました。就任前に自分なりに人に聞いたり、本を読んだりして、経営面ではこんな工夫はどうだろう、これについてはどういう施策を打っているのだろうか、とさまざまな問題意識を持って着任いたしましたが、部外者である素人の思いつくような施策はことごとく実施済みであることを知るに至って、業界トップの会社の経営というものはかくも周到なものかと、深く感銘したことを覚えております。
;就任後2年半が経ちました。この間、全世界的な潮流として、企業統治のあり方そのものを見なおす動きが加速しております。米国においては企業改革法が実施され、本邦においてもかつてない頻度で商法の改正が実施されております。その背景として、内外で大型の企業不祥事が相次ぎ、企業の社会的な責任を問う声も日増しに厳しくなっていることも見逃すわけには行きません。監査役の役割についても、その制度的な枠組み及びあるべき機能を根底から問い直されており、その点で、またとない時期に監査役の立場を経験していると考えております。監査役の職務をまっとうするためには、さまざまな日常の業務をこなしていかなければならないわけですが、同時並行して、あるべき企業統治のあり方を考え、学び、提言してゆくことも大切であり、そうした意味で実務・理論の両面で取り組むべき課題を持って、充実した日々を過ごしております。


監査役としての仕事をご紹介ください

;私は現在本社の常勤監査役の他に、上場・公開子会社の監査役を各々1社、未上場大会社の監査役を1社兼務しております。ルーティーンとしては中間期及び本決算の監査にかかわる様々な仕事、会計監査人との面談、経理部門とのすり合わせ、その他必要なもろもろの監査があります。本決算に関しては、監査役会の主催、監査報告書の作成、株主総会の準備と出席がもっとも重要な仕事です。また、グループ各社の監査役が十数名おりますので、四半期毎にグループ監査役会を開催し、その時々の課題、本社の施策などを説明し、意見の交換をしております。月次では各社の取締役会・監査役会への出席があります。ルーティーン以外の仕事は、すべて応用問題と考えております。適法性監査だけに仕事を限ってみても、コンプライアンスの見地から、組織・制度は適切に組成されているか、運用面で問題はないか等々、考えるべき問題は大小取り混ぜていくらでもあります。各社の成り立ち、おかれている状況から、どのような監査が必要か、どの点に焦点を絞るかを考えた上で、さまざまな対応を試みます。会社によっては、コンプライアンス面で包括的な見直しがもっとも効率がよいと判断すれば、外部のコンサルタントの導入を提言しますし、当面の課題として在庫の取扱の見直しが最重要と考えれば、自ら在庫の調査にあたることもあります。

kk_0212_photo2.jpg;監査の基本的な方法は経営幹部との面談です。監査の対象も、本社、海外子会社、国内子会社、各地に所在する事業本部等々さまざまです。海外子会社に関しては、2~3ヶ月に一回出張します。問題と思われる点があれば、日本側の担当の幹部と面談し、あるいは当事者同士の打合せを促すなどして、解決の目処がつくまで見届けます。国内子会社、事業本部に関しては、ルーティーンとして回るというよりも、当方が必要と判断するか、あるいは各社の監査役及び執行部門からのリクエストにより、案件ごとに往査し、フォローする形をとっております。
;その他には、監査役協会の全体会議、実務部会、講演会への出席があります。また、企業統治のあり方と実践に関しては、他社の監査役、あるいは経営陣と面談して、情報を得たり、意見を交換することも頻繁にやっております。これ以外の時間はすべて勉強にあてておりますが、対象が広いためにどこまでやっても追いつかないというのが正直なところです。経営、民商法、会計の勉強には終りがありません。また、その時々に取り組むべき課題、たとえば現在では改正商法の理論及び実務対応、米国企業改革法と、それにかかわるNYSEの上場規則、徐々に発表されているSECの施行規則のフォロー、これらに関わる社内での対応策の検討、等々もあります。定期刊行物では『月刊監査役』『旬刊商事法務』『取締役の法務』『旬刊経理情報』だけはフォローしようとしていますが、これだけでもなかなか大変です。


日常の業務で特に自分が力を入れている監査についてお話し願います

;監査業務の主要な力点は、予防監査に尽きると考えております。したがって、コンプライアンス、リスク・マネジメント上問題が起きうる、と思われる点について、組織・制度・運用の各面について当事者の意見を聴取し、手直しを要すると思われる点については、解決に向けての方向付け、制度的・人的・物的な手当てが確認できるまでフォローします。問題と思われる点を、単に問題として代表取締役に指摘する、ということでは監査の名に値しないのではないでしょうか。


監査役としてやり甲斐、生き甲斐を感じる時はどんな時ですか?

;会社をよくすること、が会社経営に携わるものすべての行動の指針だと考えております。
監査役の立場で、会社をよくするために何らかの貢献が出来たと感ずる時が、やり甲斐を感ずる時だと思います。
;コンプライアンスあるいはリスク・マネジメント上の問題の解決または予防のために、執行部門の当事者と討議し、あるいは当事者間のミーティングをアレンジするなどして、物事が改善に向けてステップアップする時には当然手ごたえがあります。コーポレート・ガバナンスの改善・改革に関して、さまざまな情報を集めて監査役としての意見を形成し、執行部門に提言して、前向きの取り組みが実施される時も同様です。
;厳密には監査の範疇には入りませんが、事業本部、或いは子会社、特に海外子会社等で、対子会社・対本部とのコミュニケーションが不十分であったり、行き違いが生ずることは往々にして起こりますが、監査役はこうした悩みや不満を聞くには格好の立場にあり、問題の輪郭を把握した上で、事態の改善に貢献できた時にも、手ごたえを感じます。
また、このような役割を果たすに足るだけの見識を備えることも大切だと思いますので、勉強することも楽しみですね。


商法改正について一言お願いします

;委員会等設置会社に関する商法改正は、各企業にとって企業統治に対する取り組みを見直し、考えを整理するきっかけを与えたという意味では評価できると思います。ただし、採用する場合には、3委員会と執行役のセットしかない、というのもいかにも融通が利かないと思います。現在さまざまなバリエーションが議論に上っていることもあり、このままの形で採用する会社は少数にとどまるのではないか、という印象を持っております。 


≪山本さんの略歴≫
1948年生まれ。東京都出身。1972年東京大学卒業後、三菱銀行入行。1977年ロンドン 大学大学院(LSE)で学位を取得し、ミラノ支店長、調布支店長、新橋支店長を経て1999年東京三菱証券取締役、翌年コナミ常勤監査役に就任。現在はコナミの他、コナミ・スポーツ、コナミ・ジャパン、コナミ・スポーツライフの監査役を兼任。趣味は読書、ゴルフ、クラシック音楽鑑賞。

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