監査役インタビュー

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No.4(02年10月) ホテル オークラ 常勤監査役 東 信男さん


「ホテルの監査役」

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 一般に余り知られていない監査役の働く姿や、生の声などの情報をHPで提供していく「今月の監査役」。
 第4回目はホテルオークラ監査役の東信男さん(監査役歴4年)に登場していただきました。東さんは海外経験が豊富で、経理・管理部門やホテルオーナー代理等の経験のあるベテラン監査役。読者の皆様にも馴染みの深い「ホテル」の監査役は、実際どのような点に注意を払って監査を行っているのか。オープン間もない頃よりオークラを見守ってきた東監査役にインタビューしてみました。    


《インタビュー》

ホテルの監査といいますと、何を一番集中的に監査していますか?


;何と言ってもリスク管理です。法的なリスクはもちろんですが、ホテルならではのリスクは少なくありません。例えば、安全衛生、食品衛生、防犯、防災、公害といったものから、内部統制や従業員規則のチェックなど、ホテルの監査はリスク管理の固りです。これがホテルの信用に大きく関わるのですから、本当に気が抜けません。往査の際には、施設・料理・サービス・予約の取り方やドアマンの対応まで神経をとがらせます。もちろん監査役という立場からですけれども。
;そのために弊社では月に一度、社長、支配人、総料理長、保健所担当官等10名ほどで構成されている危機管理委員会を私が提唱して開いております。降雪時の除雪作業からVIP対応までどんな些細なリスクに対しても検討をおこなっています。いわゆる適法性監査のみではホテルの監査役は務まりません。


妥当性監査に踏み込まざるを得ないと言うことでしょうか?

;そうですね。監査役という立場から、経営に対しても積極的に助言を行っております。監査役という性格上、経営から一線を画していますので、逆に経営がよく見えると言うこともあります。これは、社長の理解があるということも重要だと思うのですが、先輩監査役達が築いてきた「会社の監査風土」も大きく影響しているのだと思います。それでも監査役として、代表取締役等に苦言を呈する時はなかなか大変ですが、しかし、この時こそが監査役の存在意義が問われている時なのだと思います。そしてそれが自分の役割だと思っています。
;もちろん、経営会議・運営会議にも出席しています。現在、法的リスク管理を徹底するために、経営理念にコンプライアンスを入れる必要を感じています。コンプライアンス委員会の設立を提案しています。


お忙しい毎日をお過ごしの様ですね。

;現在、3人の優秀なスタッフに力になって貰ってはいますが、経営を含めた妥当性監査に踏み込んでいくと常勤1名では大変忙しいですね。オークラグループの監査役をいくつか兼任していますから、会議は毎日入っています。監査役の活動が見えないと言う話を耳にしますが、私は毎朝8時に出社して7時頃まで働いています。


海外での経験についてお話下さい。


;海外はセントルイスの他に、アムステルダムとバルセロナに駐在し、約10年間海外勤務をしました。それぞれ色々と勉強になりましたが、監査役として最もいい経験ができたと思うのは、やはりバルセロナですね。リッツカールトンホテルのオーナーの代理ということで3年間赴任したのですが、ホテル運営から離れていましたので、ホテル運営に踏み込まない留まり所を体得できたと言えばいいのでしょうかね、経営と監査の関係を学ぶ大変いい機会になりました。
;また先にも触れたリスク管理の重要性ですが、これも海外から学びました。向こうは性悪説なんですね。従業員は何をするか分からない。だから厳しい規則を詳細にわたって規定し監視を強化しなければならない。透明性や厳格な規則が強く主張されるのも、性悪説的社会が前提になっているからです。性善説を前提にしている日本の状況とは大きく異なりますね。社会風土が全然違います。そのため、ある海外監査を行った際に、それまでの日本の性善説に基づいた組織体制から性悪説に基づいた組織体制へ変更させたところ、内部牽制が働き出して従業員の横領が発覚したことがありました。リスク管理にはこのような経験は大変参考になりました。しかしリスク管理を本当に機能させるには、このような「制度」よりも「運用」が重要なのだと思います。コーポレートガバナンスの議論も同じなのではないでしょうか?


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←ホビザホテルより送られた感謝状






ホテルオクーラの哲学をまとめたオークラプリッジも東さんのアイディアとお聞きしましたが?

;それもバルセロナのホビサホテルで学んだことです。ホテルオークラでは、全職員が仕事に就く前に必ずこのプレッジを読み上げます。帰国後すぐに導入をお願いしました。


監査役として、生き甲斐や喜びを感じる時というのはどういう時ですか?


kk_0210_photo03.jpg;監査役が生き甲斐や喜びは感じない方が本当は会社のためにはいいのかもしれませんね(笑)。自分があの時これを指摘しなかったら、会社はどうなっていたのだろう。指摘しておいてよかった、などと考えることも無いわけではありません。しかし監査役の仕事は、基本的に公表していくような性質のものではないと思います。協会はもっと積極的に黒子に徹している監査役の役割をアピールすべきです。
;しかし、何と言っても理解のある経営トップ、優秀なスタッフ、そして尊敬できる先輩監査役と一緒に仕事を出来ることが、一番の喜びです。


≪東さんの略歴≫
1941年生まれ。大阪府岸和田市出身。1965年ホテルオークラ入社後、セントルイスで管理関連の研修を受けた後、81年アムステルダムで財務部長を、94年バルセロナでホテルオーナー代理を勤め上げ、98年監査役就任。国土交通省建築物バリアフリー対策部会専門委員、日本ホテル協会税制等対策委員及び同福祉・環境問題等専門委員、当協会海外監査研究会及び非製造業第2部会幹事。

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オークラプレッジを読み上げる
東監査役と監査役室の皆さん

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