監査役インタビュー

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No.20(15年6月)京王電鉄株式会社 常勤監査役 黒岩法夫さん

テーマ:企業グループのガバナンス体制の整備について

HP20150525 306.jpg今回の監査役インタビューでは、企業グループのガバナンス体制の整備について京王電鉄株式会社常勤監査役の黒岩法夫様からお話を伺いました。黒岩様は、監査役ご就任以降、会社の体制整備のため、経営者に対して様々なご提案をされ、それらの実現に向けて、監査役として力を尽くしてこられました。今般の会社法改正やコーポレートガバナンス・コードについても、早い段階から準備を進められたそうです。こうした監査役としての精力的な取り組みについてご紹介いただきました。

※ こちらでは、インタビューの一部をご紹介いたします。
※ 全文は月刊監査役641号(2015年6月号)に掲載しております。

― 京王グループのガバナンス体制の概要を教えてください。

当社のガバナンス体制の概略の特徴的なこととして、1つ目は、機関設計としては監査役会設置会社を選択しておりますが取締役会の任意の諮問機関としてガバナンス委員会と指名・報酬委員会を設置していることです。以前から設置していた指名・報酬委員会は代表取締役と社外取締役で構成されていますが、本年2月に設置したガバナンス委員会は代表取締役、担当常務と社外監査役も含めた社外役員で構成されています。私も監査役会の決議を経てガバナンス委員に選任されています。
また、迅速な意思決定を行うため会社法に基づく特別取締役で構成する特別取締役会を設置しています。特別取締役を選任している会社はわずかですが、緊急時など機動的な意思決定が必要な場面も想定されますので、特別取締役会を設けておく必要はあると思っています。
業務執行に関してもグループ経営協議会を始めとして、各種委員会もグループワイドで展開しています。尚、東証へは2名の社外取締役と3名の社外監査役の社外役員5名全員を独立役員として届け出ています。
2つ目は、後ほど詳しくお話しすることになると思いますが、グループワイドでの監査体制を敷いていることです。監査役会、会計監査人、監査部間の連携に加え、グループ会社監査役とも機能的に連携し、監査業務を行っています。

― グループ会社における内部統制システムはどのように構築されていますか。

当社では、2003年に「京王グループ理念」を定め、「京王グループスローガン」、「京王グループ経営ビジョン」、「京王グループ行動規範」を設けるなど、かなり以前からグループを意識した対応を行ってきています。
こうした中、会社法制定を機に2005年に決議した内部統制システムの基本方針も、当初から「京王グループ内部統制システムに関する基本方針」と銘打ってグループワイドでの展開を意識して整備に取り組んできました。2006年にはグループ会社全社で基本方針を決議しています。2007年には内部統制委員会を設置しています。
内部統制システムの運用状況の事業報告への記載についても2008年度分から始めています。グループ会社の一部でも記載を始めているところもあります。

― 監査役会の運営において工夫した点や特徴的な点を教えてください。

特徴的なことといえば、代表取締役と監査役全員で意見交換をする監査役協議会を年1回実施しています。また、常務取締役の方々にも年1回、監査役全員でヒアリングをさせていただいています。
主要なグループ会社の社長に対しても、新任社長を中心に監査役全員でヒアリングをさせていただく機会を毎年設けています。常勤監査役のみで実施するグループ会社社長ヒアリングと合わせると2014年度は10社以上になりました。
常勤監査役と代表取締役との打合せは、定例で年4回実施しています。監査状況を報告して意見交換をさせていただいたり、監査役から提言や要請をさせていただくこともあります。実際はこの定例打合せに限ることなく、必要な時にはいつでも時間をいただいてお話をさせていただいていますし、社長が監査役室にお越しになることもあります。
その他、監査役のアドバイザーとして、大手法律事務所および大手監査法人との間で顧問契約を締結しています。定例の打合せ会を設けて種々アドバイスをいただくほか、年に数回、グループ会社監査役や監査部の皆さんに対して研修会を開催してもらっています。
監査役室には4名のスタッフが配置されています。彼らは専任で、私どもをフルに支えてくれています。実際、スケジュール管理はもとより、法改正などに伴うチェックリストのアップデートやヒアリング等のアレンジなど各部やグループ会社との折衝などを含めて監査役は彼らのサポートなしには監査活動を円滑に進めることは不可能です。

― 御社で採用されている派遣監査役制度とはどのようなものか教えてください。

当社では以前から派遣監査役制度を導入しています。派遣監査役の方々は、社長直轄の監査部に所属し、当社からグループ会社に監査役として派遣された形で監査部長の指揮のもと監査業務を行っていただいています。
現在15名の派遣監査役が存在します。グループ会社プロパーで監査役になられた方などを含めると合計20名のグループ会社監査役がおります。グループ会社の全社に監査役を配していますので、1人で2~3社を担当されている監査役もいらっしゃいます。また、親会社常勤監査役もグループ会社のうち大会社では非常勤監査役を務めています。

― グループ全体のガバナンス体制の監査はどのように行っていますか。

HP20150525_no.2.jpg当社グループでは、原則毎月、グループ会社の監査役が一堂に会するグループ監査役会を開催しています。各社での監査の状況を報告してもらうほか、当方から親会社の重要議案の報告を行ったり、法改正などの話題を提供したりして意見交換を行っています。また、必要に応じて経営企画部や経理部などからグループ全体に関わる施策について説明にきてもらうこともあります。議事録も作成していますし、年間日程を組んでいますので、欠席者は稀です。
また、グループ会社の監査役は、監査部や監査役室のスタッフとともにグループ監査研究会を設置して独自にテーマを設定するなどして研鑚を深めています。この会合には私ども親会社の常勤監査役は参加していません。
これ以外にも、年2回4月と11月に、私ども常勤監査役によるグループ会社監査役ヒアリングを実施しています。グループ全社の監査役を各社ごとに2週間ほどかけてヒアリングさせていただくのですが、4月には各社の前年度の監査計画の遂行状況や内部統制システムの運用状況について意見交換を行い、グループ各社の監査報告書の作成がスムーズに進むか確認を行います。また、11月には主に監査計画の進捗状況や各社が抱えるリスクなどについて意見交換を行っています。
年1回、グループ会社の監査役全員が当社社長と意見交換をする監査役懇談会も開催しています。私ども常勤監査役と監査部長も出席しますが、社長から直接個々の会社の監査状況などをグループ会社監査役に聞いていただき、リスク認識を共有させていただく重要な機会です。

― 改正会社法への対応はどのように行ってこられましたか。

今般の会社法改正などでは、常勤監査役としては要綱の段階から代表取締役との打合せ会の場を通じて議論の状況を報告するなどして意見交換をさせていただき、その後は経営企画部や総務法務部といった各担当部署と打合せを行い対応を進めていただきました。
グループ全体での対応については、グループ会社の社長を集めたグループ経営協議会の場で方針が示されました。機関設計は現在の監査役設置会社を維持し、グループ会社のうち監査役会設置会社は来る6月の各社株主総会で定款を変更し、任意の監査役協議会に衣替えする予定です。これは、ガバナンスレベルを維持しつつ、親会社監査役や派遣監査役が子会社において社外性がなくなることに対応するものです。従って、当社グループにおける監査役監査の体制そのものは現状と変わらないことになります。
グループ内部統制システムについては、5月1日から新方針で整備、運用を進めていくこととし、3月度の取締役会において従前の基本方針でレビューを済ませるとともに、改正会社法、改正会社法施行規則に準拠し、新たな項目を加えた新方針を決議しました。

― 内部統制システムの運用状況の開示についてはいかがでしょうか。

先ほどお話ししたように事業報告へ運用状況を記載することについては、2008年度から始めていますが、今後は今まで以上にグループワイドで捉えての記載方法が求められることになると思います。
グループ管理のあり方についても見直しが必要になりますが、従来よりグループ会社協議基準が定められ運用されてきましたので、これをベースに一部修正を加えることで対応することになります。
特に監査役に係ることとして、子会社からの親会社監査役への報告体制について、従来から私どもはグループ会社監査役や親会社における窓口であるグループ事業部からの報告システムを組み立てていましたが、会社法改正を機に親会社におけるグループ会社所管部署を親会社監査役へのメイン報告ライン、グループ会社監査役からの報告はサブラインとして明確化しました。

― こうした環境変化の中で、今後の課題だと感じられていることはどのようなことでしょうか。

監査役としての課題はまだまだ残されています。当面の具体的な課題ですが、まずは、監査役監査基準の改定準備を始めました。
従来、日本監査役協会のひな型を参考にさせていただいて、監査役としてのベストプラクティスを意識しながらも、監査役としての職責を果たし、また当社の体制にもマッチした監査基準でなければと思い、法改正などの際には全面的に一字一句見直しを行っています。
今回も協会のひな型のリリースを待っているところですが、実はいくつかひな型と違う点があります。
一つは、監査役が自ら内部通報制度の通報窓口になることについては慎重に対応していますので、基準にはうたっていません。
内部通報制度は内部統制システムの構成要素のひとつですので、適正に制度が整備され運用されているか、制度の信頼性は確保されているか、経営トップや監査役に適時適切に報告されているか、といった点を監査する必要があるためです。
同様の理由で、第三者委員会の委員に監査役が自ら就任することも基準にはうたっていません。
これも監査役としては、会社が第三者委員会を必要な場合には適切に設置し、対応するかを監査する立場にあると判断したためです。
また、金融商品取引法に関する監査については、積極的に取り組んでいます。
有価証券報告書や内部統制報告書は最重要開示資料ですので、監査人と十分にコミュニケーションをとって監査を進めています。特に6月には監査人と打合せ会を開催し報告書の内容について事前に詳細な検討を行っています。

― コーポレートガバナンス・コードへの対応についてはいかがでしょうか。

監査役監査基準の改定とも関連しますが、コーポレートガバナンス・コード対応についての監査も行う必要があります。
コーポレートガバナンス報告書は重要な開示資料ですので、コードに従って適切な開示が行われるか、コードの全項目について監査を行います。
監査役に直接係る対応については、特に補充原則3-2①に係る会計監査人の評価基準の策定に関し、会社法改正への対応とも併せ、必要な手当てを進めています。
まず選任権の行使に関しては、以前、監査役会決議で定めた「会計監査人の解任又は不再任の決定の方針」を見直し、改めて「会計監査人の選任等の方針(仮称)」を5 月度監査役会で制定しようと思っています。
コードでは評価基準ということですので、会計監査人の監査実績、コミュニケーションの充実度、独立性に関する職業倫理規定の順守状況、日本公認会計士協会による品質管理レビューの結果なども含めた品質管理状況などの評価項目を設けて判断基準を明確にした上で、当社の会計監査人として相応しいかの決議を行いたいと考えています。
また、会計監査人の報酬同意についても、この機会に新たに「会計監査人の報酬の同意の方針(仮称)」を制定したいと考えています。従来から行ってきたことですが、会計監査人の報酬の妥当性について検証し、同意の理由を事業報告に記載できるよう準備しておきたいと思っています。
監査役のトレーニング方針については、会社で開催する外部講師による研修会への参加などに加え、監査役サイドでは、グループ会社監査役に対しては、親会社監査役による新任監査役ガイダンスや基礎研修の実施に加え、監査役の法律アドバイザー、会計アドバイザーによる集合研修会を実施しています。
以上お話ししたことは、5月下旬には概ね固まっていると思いますが、監査基準の改定はおそらく7月以降になると思います。
最初に申し上げた通り、日本監査役協会の指針やひな型はもちろんのこと他社の監査役の皆さんの対応も是非参考にさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。


―ありがとうございました。

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