監査役インタビュー

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No.19(14年10月)株式会社VOYAGE GROUP 常勤監査役 児玉 裕二さん

テーマ:東証マザーズ上場における監査役としての対応
    -経営執行部門との調整、会計監査人や社外監査役との連携等について-

kk_1410_photo1.JPG今回の監査役インタビューでは、平成26年7 月2 日に東証マザーズ上場を果たされた株式会社VOYAGE GROUPの常勤監査役である児玉裕二様に、上場に至るまでの体験談をご紹介いただきました。児玉様は長く銀行員として勤務され、その後メーカーの内部監査部門を経て、ベンチャー企業での監査役を志向され、株式会社VOYAGE GROUPの常勤監査役にご就任されました。上場に至るまでのエピソードとして、ベンチャー企業ならではの工夫や苦労、そしてやりがいについて教えていただきました。

※ こちらでは、インタビューの一部をご紹介いたします。
※ 全文は月刊監査役632号(2014年10月号)に掲載しております。

《インタビュー》

東証マザーズ上場に至るまで
⑴ 監査役就任、上場準備への本格的な取組み
―平成21年に現在の会社の監査役にご就任され、平成26年7月にマザーズ上場を果たされました。児玉様がご就任当初の御社の様子を教えて下さい。また、IPOに向けて、経営執行部門の方々とは、どのように意思疎通を図ってこられたのでしょうか。

 当社は9 月決算会社で、私は平成21年8月末に就任しましたが、会社では既に幹事証券会社を定め、上場準備に本格的に取り組み始めていました。就任日も、朝一番から会社の管理担当部長と直接幹事証券会社で落ちあい挨拶を兼ねたミーティングに臨んだわけですが、そこで監査役への要望事項を色々と聞かされました。この時会社はずいぶん準備を急いでいたわけですね。
 私が監査役に就任した時には、幹事証券会社により上場準備における課題は既に洗い出されていたため、上場準備のスケジュールはできており、課題解決を時間と競争しながら進めるという段階でした。監査役もその課題解決事項の一つでした。
 当時は、会社が、上場について意識はしていても全く体制ができていなかったということもあり、上場準備メンバーに私を加えた全員と幹事証券会社で定期的なミーティングを繰り返し、課題の抽出・解決の進捗状況の確認を行いました。
 監査役には、まず8月末の就任日に、9月末決算に向け、平成21年度の監査役監査を実施し報告書を作成するべく監査計画の作成を求められました。となると、1か月間で全部署の監査を実施することになるため、監査計画上の監査項目に従いヒアリングを実施し監査調書を作成しました(幹事証券会社から表現面では色々とアドバイスをもらいました)。私は就任したばかりで、正直なところ各部署の責任者の名前と顔は一致せず、スケジュール調整すら一人では行うことが難しい状況でした。しかし、その少し前に内部監査室が立ち上がっており、そこには、社歴が長く一旦退社していたところを上場準備のため呼び戻されていた室長がおりましたので、この内部監査室長とともに監査役監査と内部監査を同時実施することで、何とかこの状況をクリアしました。

―監査法人とは、どの段階から任意契約を結ばれたのでしょうか。また、任意監査の監査法人との連携のあり方についてお聞かせ下さい。

 監査法人は私の就任の2期くらい前から、上場準備のための準金商法監査契約の下で監査を実施していて、当社の経理部門のメンバーは既に監査を受けるということには慣れていたようです。上場準備定期会合にも、監査法人から、監査チームリーダー、金商法のJ-Sox対応の担当者等、合わせて3名は必ず出席していました。監査役と監査法人との連携は、上場準備のための準金商法監査だからこそ始めておくべきだと考えていたので、私の方から監査役との監査法人との定期会合を提案し、協会の「監査役監査実施要領」を参考に意見交換を行っていました。当時はまだ監査法人側との温度差もあって、監査法人のリーダーからすると、ここまでやるの、という戸惑いもあったようです。

―準金商法監査の契約を結んでいるとはいえ、監査役は会計監査を行わなければなりません。監査役の会計監査との重複を避け、効率的に監査を役割分担していくための工夫などを教えて下さい。

 効率的に会計監査を行うため、監査法人が実施する監査手続に立ち会えるものは立ち会い、現物確認をし、残高確認についてはその結果を聴取することで重複を避けていました。
 一方で、当然のことながら監査役としての会計監査は一から行い、気付いた点は定期会合の場で監査法人の方に伝えていました。会計監査については、自分が経理責任者として従事した経験を基に、会社の中で会計業務・経理業務がきちんと行われているかどうかを監査していました。

kk_1410_photo2.JPG⑵ 上場審査直前において
―上場審査には、直前2期の会計監査人からの監査証明が必要になります。また、上場審査の際には、監査法人への東証からのヒアリング項目の中に監査役とのコミュニケーションがあります。監査法人とのコミュニケーションについて苦労されたことなどはありましたでしょうか。

 実は私の就任した平成21年末に、上場準備は一旦凍結になりました。その年の定時株主総会の時点で会計監査人選任議案上程を取消ししています。その後、昨年7月から再び上場準備を始めました。その間も監査法人は準金商法監査を継続していましたので、今回の上場申請準備期間には既に監査法人監査も軌道に乗っていました。また一旦凍結した際に監査法人の担当者も変更しており、新しい担当者の方は私とよく波長の合う方で、会計監査人との連携として四半期毎に会合を持ち、公認会計士の非常勤監査役も同席する等、三様監査の形も実質的なものとなっていましたので、特に新たな苦労や問題は感じませんでした。

⑶ 上場申請に際して
―上場申請に際して、社内の他の部門等とはどのように連携されたのでしょうか。また、上場申請前の幹事証券会社とのやりとりで、苦労された点などはありますでしょうか。

 最初の準備期間の際には、監査役も上場準備メンバーと一緒に幹事証券会社との細々とした対応も含めて矢面に立たされていたのですが、今回の上場準備再開後は、経理部門や法務部門のみが証券会社の証券引受部門及び審査部門との会合に臨み、監査役は初回の現状確認会合に出席し、日常監査状況の証跡を残すための調書化を要請されただけでした。それまでの段階で監査役監査の体制を確立し、実務部会等でお聞きした事例等を参考に監査を行っていたためだったのでしょう。
 幹事証券会社の中間審査では、証券引受部門からの監査役面談リハーサルと審査部門からの監査役面談があり、取引所から質問されるであろう内容について、嘘はつかない範囲で前向きな表現を心掛けるようアドバイスを受けました。最終審査では監査役の出番はありませんでしたが、幹事証券会社の意向を受けて、内部監査結果の検証を間接的に(内部監査室から)依頼されました。


―取引所の審査における常勤監査役への面談については、どのような事項に留意して対応されたのでしょうか。他の監査役の方々や監査法人との情報共有等はどのようにされたのでしょうか。

 非常勤監査役とは、中間審査時点での各種質問事項への回答内容の事実確認とその内容を共有した程度です。監査法人とは、お互い独立して準備をしていたので、特に情報共有等は行っていません。
 取引所との面談に際しては、証券会社の中間審査段階で準備した項目毎に頭の整理のため回答を準備した程度です。取引所の面談事項は幹事証券会社の審査部門による面談事項と概ね同じなので、証券引受部門に東証面談前日に再度リハーサルを行ってもらい、回答要領等疑問な点を確認しました。このときには、「ざっくばらんに、自然体で」とのアドバイスを頂き、勇気づけられました。実際の取引所面談では、証券会社の面談のときより項目が少ないとの印象を受けました。やはり、証券会社は厳しくも手厚く指導してくれたと思っています。

上場が決定して
今だから言える、IPOにあたって克服した課題等はありましたか。

 会社としての予算実績管理体制や事業自体の見直しが行われ、証券会社や株主であるファンドからの指導もあり、独りよがりな体制だったところを、第三者に理解してもらえるように整理し、自社の特長を明確にできたことは進歩だったと思います。

―上場申請が受理され、晴れてマザーズ上場が決まった際のお気持ちをお聞かせ下さい。

 私の就任の経緯が上場準備のためであったということもあり、私自身の目的は達成できた、という達成感はあります。ただ、まだまだレベルアップが必要と思っていたので、最終審査にパスし上場申請が受理されたという事実には、「本当にこれでいいのかな。」という主観と対外評価の差も含め、いささか拍子抜けしたというのが正直な気持ちです。もっと波乱万丈なものだと思っていましたので。

―IPOにあたって、協会の資料や研修等でお役に立てたものはありましたでしょうか。或いは、このような点をサポートしてほしかった等のご要望はありますでしょうか。

 協会の「新任監査役ガイド」や「監査役監査実施要領」等の資料や研修会、特に実務部会での情報交換のおかげで、私なりの監査役監査像ができていました。それがIPO 審査までの監査役監査においては鍵になったように思いました。監査環境にもよりますが、協会からの各種情報を十分に活用すれば合格ラインに到達できると自信を持って言えます。
 強いて要望を言うならば、協会のホームページのNet相談室は非常に貴重な情報の宝庫となっていると思いますので、これをもっと活用できるようにしていただければと思います。私も、実際に当社で起きた問題について、同じような事例を色々と検索し、対応に役立てることができました。

kk_1410_photo3.JPG最後に
今後の課題を教えて下さい。

 会社としては、何よりも持続的な成長で株主満足を達成していくことが重要です。また、内部的には従来十分意識していなかったIR 体制の構築・運用と、内部統制の着実なステップアップは永遠の課題であり、マラソンのようなものだと思っています。監査役監査についても、当然、上場会社としての監査実務へ切り替えなけれならず、その職責はますます重くなると思います。


―最後に一言、これから上場を目指す会社の監査役の方々向けにメッセージをお願いいたします。

 上場準備のために就任した社外常勤監査役の方々にとっては、各社各様の事情により就任後の監査役の活動内容は異なるかもしれませんが、上場準備として目先の問題について何かをすれば達成感を得ることはできるでしょう。監査役自身のためには(会社のためにもなるのですが)、ただそれだけではなく、監査役監査とは?そのために監査役個人として何をしてゆくのか?を考えて日々行動することが、大事だと思います。
 「監査役監査とは?そのために何をするのか?」は社内では孤独な存在である監査役共通かつ永遠の命題・課題・悩みで、それへの解は協会からの資料や各種研修参加、特に実務部会参加を通しての監査役間のネットワークづくりの中から見付けることができると思います。

―児玉様、貴重なお話をありがとうございました。
本インタビューを実施した日は、折しもマザーズ上場が決定し、まさに上場をする日の前日であり、事務所のロビーは各方面から贈られたお花で溢れていました。団塊の世代は新しいことにチャレンジしたいというスピリットを持っている、というお言葉のとおり、「航海」を意味するベンチャー企業の監査役として上場を果たされるお姿からは、開拓精神を感じました。また、上場準備には一旦凍結の期間があり、それがウィスキーの熟成期間と同じで、良い結果をもたらしてくれたというご発言が印象に残りました。この度は貴重なお話をありがとうございました。


≪児玉さんのご略歴≫
1970年株式会社住友銀行入社(現株式会社三井住友銀行)。
2000年アサヒビール株式会社入社(現アサヒグループホールディングス株式会社)、監査部エグゼクティブプロデューサー。
2006年同社監査部部長。08年株式会社アクティバスファーマ監査役(常勤)就任。
2009年株式会社ECナビ(現株式会社VOYAGE GROUP)監査役(常勤)就任、現在に至る。

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