監査役インタビュー

一覧へ戻る

No.18(14年3月)セメダイン株式会社 常勤監査役 高津 正治さん

テーマ:内部統制における監査役監査-内部監査部門との役割分担-

kk_1402_photo1.JPGこの度、日本監査役協会では、監査役の皆様から日頃の監査活動の様子をご紹介頂くホームページ企画「監査役インタビュー」を再開いたします。
記念すべき再開初回には、セメダイン株式会社常勤監査役の高津正治様にご登場いただきました。高津様は研究員としてセメダイン株式会社に入社され、長く技術職として研究開発に従事された後、営業部門を経て監査室長に就任、それらの経験を活かして、現在監査役としてご活躍中です。
今回は、監査役として内部監査部門である監査室といかに連携し、役割分担をしているか、会社法監査と金商法監査の双方について、その取組み状況をご紹介いただきました。

※ こちらでは、インタビューの一部をご紹介いたします。
※ 全文は月刊監査役625号(2014年3月号)に掲載しております。

《インタビュー》

監査役および監査室の内部統制における役割
―それでは、まずは御社の社内の状況についてご紹介いただければと思います。社内の基準等においては、内部統制における監査役の役割はどのようになっているのでしょうか。

内部統制というとき、基本的には、会社法上の内部統制と金商法上の内部統制があります。会社法上の内部統制については、当社にも協会のひな型を用いた監査役監査基準が制定されており、その第21 条に則って監査を行っており、それは殆どの会社さんと同様かと思います。監査役協会では2011年に監査役監査基準が大きく改定されましたので、当社もその際に大掛かりな監査役監査基準の改定をしました。

―では、御社では監査室は内部統制においてどのような機能を担っているのでしょうか。

当社では、元々は、会社法上の内部統制を視野に入れて監査室が設置され、私が監査室に入るまでは役員の方が監査室長を兼務されていました。その当時は、監査室は事実上あまり機能していないという状況でした。その後、私が監査室長として専任で就任したときからは、金商法上の内部統制を視野に入れた組織となりました。私が入ったときから2年間は、金商法上の内部統制への対応を主に担当し、最初の内部統制の体制の構築を担ってきました。ただ、当然、監査室という部門は社長の指揮命令下で、会社法上の内部統制に関する監査が重要なミッションなので、本来であれば、会社法上の監査を中心に行う機関であるはずです。私が監査室を離れ監査役に就任して5年半になりますが、監査室で担う監査のうち、現状では金商法監査と会社法監査の比率は半々くらいでしょうか。本来は会社法監査を本業とすべきなのですが、金商法上の内部統制の監査の業務も非常に多く担っていると言える状況にあります。

金商法監査への監査役の関わりについて
―御社では監査役は金商法監査にどのように関わっているのでしょうか。

財務報告に係る内部統制の監査については、当社では可能な限り積極的に取り組んでいます。それはやはり、金商法上の内部統制の監査は、監査役が本来行うべき会社法上の業務監査とも一部重複しており、それを行うことで財務諸表等の監査も同時に出来ますし財務報告に係る内部統制の一通りを見ることが出来るという大きなメリットがあります。金商法上の内部統制について踏み込んでいけば、リスクの低減にもつながり、他の監査の補助手段としても活かすことが出来ると考えています。

―御社では金商法の内部統制について対応する内部統制委員会という組織があるとお聞きしています。この委員会には、監査役はどのように関わっているのでしょうか。

監査役は内部統制委員会にオブザーバーとして参加して、内部統制システムの運用、評価について間違いないか見ています。例えば評価チームが評価に行くときには、それに同行して、実際に評価が有効にされているか確認しています。その中では当然公認会計士の方とも意見交換をしたりします。
繰り返しになりますが、監査役としては、金商法上の内部統制の取組みに入っていくことには非常に大きなメリットがあるのです。金商法は、197条や207条に定められているように罰則の内容が非常に厳しいので、ここでミスをすると企業として大きなダメージを被ります。とすると監査役としては大きく踏み込んで取り組んでいく必要があると思っています。

―金商法監査に関わる上で、監査室長として金商法上の内部統制システムの構築に携わってきた経験はやはり活かされているのでしょうか。

そうですね、本当にプラスになっていると思います。監査室長として内部統制システムの立ち上げ時に関わってきたため、全体像を把握できているので、監査役として監査することは比較的やりやすい...、時間を掛けずに出来ると思っています。今では監査室長を離れて5年半経過していますし、金商法内部統制の運用も順調に推移しているので少なくなりましたが、監査役就任当初は、社内から金商法関連の相談を受けることも多くありました。

kk_1402_photo2.JPG監査役と監査室との連携について
―それでは、監査室と監査役の連携の在り方についてお聞きしたいと思います。まずは実際に御社で行っている連携の内容の一部をご紹介させていただきます。
● 朝のミーティングで情報交換
● 監査報告の相互提出(監査結果の共有)
● 遠隔地事業所への往査は同行する
● 監査項目は分担して実施(重複を避ける)
● 改善の検証も相互でチェック
ここにあります朝のミーティングというのは、具体的には何を話されるのでしょうか。

例えば、監査室長が実際に内部監査を行った上での気付き事項があればその報告を受けます。それに関して監査役が知っていて何かアドバイス等出来ること、監査役の過去の経験等について話をし、今後の対応について話し合います。また、監査のスケジュール調整についても話し合います。監査室の監査の具体的な結果報告は、メールで文書をやり取りします。ミーティングはお互いが出社した朝に行いますが、双方の業務の都合上当然会わない期間もありますので、その間に起きたこと等についてもこの場で説明します。実際ミーティングで話をするのは10分程度です。

―ちなみに監査室というのは、監査役室から見て、物理的にどのくらい離れているのでしょうか。

数メートルです。監査役室を出て数歩歩くと監査室長のデスクがあります。ですので、朝のミーティングのようなコミュニケーションが特に負担になることはありません。

―このように監査室と連携することのメリットや課題としてはどのようなことがあるでしょうか。

監査役と監査室で分担して一緒に業務監査を行うことで、監査の効率性が上がっていると思います。ただ、当然視点もミッションも違う二つの監査を一緒に行っているので、問題点も生じます。例えば、同じような内容を、業務監査の中で二者で重複して行っているのではないか、という点があると思います。ただ、基本的には、やはり監査役と監査室とではミッションや視点が違うので、ある程度割り切って考えて分担を決めていけば、大きな点は生じないとは思っています。
この他のメリットとして、往査に同行することでスケジュール上の自由度が増すということがあります。お互いあまり時間を掛けずに往査が出来ますし、その場合被監査部門も非常に喜んでくれます。被監査部門からすると、監査役が監査に来て、内部監査部門が監査に来て、その他に会計監査人が監査に来てと、同じようなことが3回も行われます。それぞれの監査は本質的に異なるものだということを説明しても、被監査部門の方々も頭ではある程度分かるのですが、やはり現場で確認する書類が同じようなものばかりでは、三者で同じようなことをやっていると思われてしまいます。ですので、監査室と一緒に行くときには、これは監査役が見ているもの、こちらは監査室が見ているもの、とはっきり分けさせることによって、被監査部門にも三様監査というものを間接的に理解してもらえるようにしています。

―例えば、監査に行く際に、三様監査について個別に説明されるのでしょうか。

被監査部門の部門長が初めて監査を受けるような方であれば、資料を用いつつ、三様監査の「いろは」から説明します。そうでないとその方からすると、監査の意義や意味が理解できませんので...。

―御社の取組みとして、他の会社にお勧めできるものはありますでしょうか。

当社でいう監査室、つまり内部監査部門との連携は、やはり最近の監査役実務の中の流行りであると思います。そこでは内部監査部門がしっかりした監査をしてくれているということが前提になります。そのためには、内部監査部門の部門長がスキルを持っていて、その上さらに能力をアップしていくように工夫していくことが重要です。監査役や監査役会としても、それをうまく引き出していくことが重要と考えています。当社の監査役会も監査室との定期的な意見交換を行っており、社外監査役の方からは有効な助言をいただいています。
その他、当社の取組みとしてご紹介できるものは何かと言いますと、当社の監査室は往査の前の事前調査というものを、非常に綿密に行っています。これは私が監査室長だったころから取り組んでいる手法です。往査に行くときに、その現場で色々と書類を確認してどうのこうのとするのではなく、被監査部門について事前に出来るだけ色々なことを調べ、問題点を把握し、往査の現場ですぐに改善提案を出来るようにしています。極端なことを言うと、往査に行った段階ではもう監査調書を作成できるくらいになっているのです。往査の現場で、色々と細かい書類チェックをして、あれこれ言うと、監査室側も被監査部門もお互い嫌な思いをします。事前にある程度調べておいて、何を見せてほしいということを伝えておけば、相手も大体問題点がどの辺りにあるか推測できるので、改善のためのアドバイスを受け入れてくれやすくなります。問題点を改善することによってその部門にもプラスに働きますし、業務が効率化したり、ミスが減らせたりします。現場では問題点は次から次へと出てきますが、それを次から次へと解決していくことが出来るのです。
 また、それは監査室に限ったやり方ではありません。監査に行くときは、監査室長も監査役も監査通知書を作成します。そのために、社内イントラ等を活用して事前に必要書類を確認し、情報収集を行います。書類等を事前にある程度確認し、考えて行けば、大体の現場のリスクは予測できますので、それを基に監査項目を作成できますし、その原因や改善方法について予め考え、検討できるのです。基本的に、業務監査の大半は監査室が担っていますが、そういう準備について、監査役も関わっていくのです。

kk_1402_photo3.JPG―今まで監査室の方との連携において、意識の相違等何か問題がありましたでしょうか。

私が5年間監査役をしている間に監査室長は3人代わりました。当然人それぞれの考え方の違い等はあります。向かって行く方向は一緒ですが微妙な差が出てくることはあり、それをどう擦り合わせするかという問題点があります。

結びに
―最後に一言、お願い申し上げます。

私は監査役を5年半やっておりますが、監査役協会には非常にお世話になっております。何にも分からなかった就任1年目から、「新任監査役ガイド」片手に監査を行っていけば大きなミスなく監査役としての仕事を担うことが出来ました。貴重な情報を教えていただけたと思い、有り難かったです。
また監査実務部会での活動には大きく助けられました。そこでは、同じようなメーカーで、同じような規模の会社の監査役の方々が集まっているので、同じような問題点を共有でき、悩んでいるのは自分一人ではないと気付き、比較的短い時間で問題への解決策にたどりつくことが出来たりもしました。
また、実務部会で色々な知り合いの方が出来ると、自分自身が間違えたり勘違いしたりしたときに、注意や助言をいただくことが出来るのです。監査役は社内では誰からも注意も助言も受けられません。ですが、一人の人間ですから、もしかするとひどい間違いを犯している可能性だってないわけではありません。問題があったときに同じ仲間が忠告や助言をしてくれることは、非常に良いことと思います。このインタビューをお読みになった方で、実務部会に参加されていない方は、是非実務部会に積極的に参加していただければと思います。他の会社の監査役の方々のご意見をお聞きすることが、監査役の監査活動において非常に重要であると思います。

―高津様、貴重なお話をありがとうございました。
監査室長時代に培った経験と知識を基に、内部監査部門と積極的かつ効率的に連携することで、監査役監査と内部監査の双方において、質と効率性の向上を図っておられる状況がうかがえました。監査役監査と内部監査では、観点は違えども共有できる手法が多い、というご意見を監査役の皆様からしばしばお聞きするのですが、高津様の取組みは正にその具体的な事例ではないかと思います。


≪高津さんのご略歴≫
1971、年セメダイン株式会社入社。研究所配属。主に、自動車部品用、電気・電子用の接着剤の開発を行う。
1994年、営業部門へ異動。主に「ICカード」、「リチウムイオン電池」用接着剤の新規開拓に従事。
2006年、内部監査へ異動。主に金商法内部統制対応に従事。
2008年、常勤監査役選任、現在に至る。

このページのトップへ